438氏のSS…2

 窓から零れるお日様の光が、まだうっすらと寝ぼけている私に話しかけます。

 もう朝だよ、早く起きなさい、って。

 平和な朝。ついこの前まで、戦いの連続だった毎日が嘘みたいに。


 私達は、大魔王ミルドラースを倒し、平和な世界を手に入れました。

 魔物さんたちは悪いココロを忘れ、それぞれの住処に帰っていきました。

 もう、魔物さんに襲われることに怯える人もいません。

 みんなが笑顔で仲良くできる世界。

 そんな世界を、私達は手に入れました…。


「ねぇねぇお母さん、お弁当のおかずはなぁに?」

「うふふ、開けてからのお楽しみよ」

 キッチンのほうから、お兄ちゃんとお母さんの話し声が聞えます。

 お弁当…。ああ、そうだ。今日は…。

 まだ寝ぼけている頭を必死で起こして、

 ゆっくりとベッドを降りました。


「おはようございます…」

 眠気眼をこすりながら、エプロン姿のお母さんとお兄ちゃんに朝のご挨拶。

 鼻先を、タマゴを焼いた甘い香りや、ちょっと焦げたお魚のおいしそうな匂いがかすめました。

「あ、おはようタバサ!珍しいね、タバサが僕より遅く起きるなんて」

 寝ぼすけのお兄ちゃんを起こしてあげるのは、いつも私なの。

 でも昨日の夜は、今日のことを考えると、わくわくしてなかなか眠れなかったの…。

「私も、お弁当作るのお手伝いしたかったです…」

「いいのよタバサ。お母さん、二人のためにとびっきり美味しいお弁当作ったから」

「うん…。楽しみなの…♪」

 今日は、みんなで森へピクニックへ出かける日です。

「お父さ〜ん。はやく行こうよ〜?」

「ご、ごめんねレックス。サンチョ、この書物を文献室に。

 あぁ、ついでにエルヘブンに関する資料をまとめて持ってきてくれ。

 あ!オジロン叔父さん!今度の各国合同会議だけど…」

 私達のお父さんは、グランバニアの王様です。

 旅が終わってからというもの、お父さんは毎日毎日、目の回るような忙しさ。

 悪い魔物さんがいなくなっても、世界のみんなが幸せになったわけじゃないんだって。

 世界中全ての人が笑顔でいられるように、この平和がずっと続くように。

 王様がやらなければならないことは沢山あるんだって。

 なんだか、王様ってとっても大変そうです…。

 お兄ちゃんもいつか、王様になって、お父さんみたいに忙しくなるのかな。

 そうしたら私とも、毎日遊べないのかな?

 …なんだか、嫌だなって思いました。

「あー、アルス王?国務を張り切るのも結構ですが、

 家族サービスも大切な仕事の一環。ないがしろにするものではありませんぞ?」

「え。えぇでも、せめてこの書類を片付けておかないと…」

「そんなもの、このオジロンに任せておきなさい。

 さぁさぁ、早く仕度を整えて。かわいい奥さんや子供達に愛想を尽かされますぞ?」

 オジロン叔父さんは、ぶぅっとふてくされるお兄ちゃんにウィンクを送りながら、

 お父さんが抱える大量の書類をガバっと奪いました。

「…ありがとう、オジロン叔父さん」

 にっこりと微笑むと、お父さんは衣装室へと足を向けました。

 それをみたお兄ちゃんが、ぱぁっと顔を輝かせました。

「さぁ、二人とも。お母様を呼んでおいで。

 ノロマなお父様がやっと腰を上げたぞ〜、とな?」

 オジロン叔父さんは、ほっほっほっと笑いながら、書類を抱えて歩いていきました。

「えへへ、さっすがオジロン叔父さんだね!

 さ、行こう!タバサ!」

「うん!」

 私達は階段を駆け上がって、お母さんが待つ寝室へと向かいました。


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