ここはグランバニア国のお城、王妃様のお部屋です。
そこに只今おわしますのは、グランバニア王アベルが第一王女、タバサ姫であらせられます。
今日は、ご両親はラインハット国にお出かけになられて、留守の隙に母上の化粧台を拝借し、鏡とにらめっこしています。
かつて、勇者である兄レックスと両親とともに魔界の王と戦った姫も今年で12歳、おしゃれが気になりだすお年頃です。
「う〜ん、うまくいかないなぁ。自分が思った通りにかわいくなれる呪文とかあったら便利なのになぁ…。」
彼女がそう言って、鏡に映った自分の顔をじっと見た、そのときであった。
鏡が虹色に輝きだし、光がタバサを包み始めた。
「えっ何?きゃぁっ!!」
光が消えて、タバサは我に返った。
「なんだったんだろう、今の。
まさか、本当にかわいくなる魔法がかかったのかしら?
・・・うゎーん。さっきと変わってないですよぅ。」
タバサが少し凹んでいたとき、廊下の方から声が聞こえてきた。
「おーいタバサ、なんだ今の叫び声は?」
「(やばい!お兄ちゃんにお母さんの部屋にいるの見つかったら、後でお母さんに怒られちゃう!)」
タバサは動揺している。そうこうしているうちにレックスは部屋に入ってきた。
「タバサ、お母さんの部屋で何やってるの?…ん!?」
そのとき、タバサとレックスは互いに自分の目を疑った。
『だ、誰!?
タバサは驚き立ちすくんでいる!
「(ちょっと待って、いつの間にお兄ちゃん、髪の毛真っ黄色にしちゃったの?お兄ちゃん、あんまりそういうことには興味無さそうだったのに…。)」
レックスは驚き立ちすくんでいる!
「(何をやっているのかと思ったら、あんなに真っ青に髪を染めちゃったのか。そりゃあ、叫ぶくらいびっくりしちゃうわな。)」
先にタバサが切り出した。
「レ…レックスお兄ちゃん、だよね…?」
「え…?何を言ってるんだよ、タバサ。
というより、そんな真っ青に髪染めちゃって、さすがにお母さん怒ると思うよ、お父さんも。」
「へ…?私、もともと髪の色、青だけど?お兄ちゃんもそんな真っ黄色にしちゃったら…。」
「は…?僕も元から髪、黄色いんだけど。本当に、君タバサ?」
「何を言っているの、私はタバサよ。そっちこそ、本当にレックスお兄ちゃん?」
「…ちょっと、このままじゃ埒あかないから、サンチョ呼んでくるね。そこ動かないでいてね。」
そう言って、レックスはサンチョを呼びに部屋を出て行った。
「(え〜っ!?ちょっと何がどうなっているの〜!?」
しばらくして、サンチョがレックスに連れられて部屋に入ってきた。
「(あー良かった、サンチョさんは私の知っているサンチョさんだ)」
と、タバサが安心したのも束の間、サンチョもまたタバサにとって衝撃的な発言をした。
「タバサ様、お母様の部屋で何をしておられたのですか?そのように髪を染めてしまっては、もともとの美しい髪が痛んでしまいますよ。」
「え…?だから、私の髪はもともと青なんですけど…。」
タバサはさすがに自信なさげに小声で答えた。
「だから、サンチョ、この子、タバサのようでタバサじゃないみたいなんだ。名前はタバサで、僕の名前もなぜか知っているみたいなんだけど。」
「うーん。それではちょっと幾つか質問してよろしいでしょうか?」
「は…はい…。」
「あなたのお父様のお名前は?」
「ち…父の名前はア…アベルといいます…。」
「えーっ。お父さんの名前も同じなの〜!?」
「レックス様、お静かに。それではお母様のお名前は?」
「は…母はフ…フローラといいます…。」
『!?!?』
「ねぇ、サンチョ、フローラさんって確かサラボナのルドマンさんのところの人でしょ?」
「むぅ、これは一体…」
「え…、違うんですか…。」
タバサはもう涙目になっていた。
「タバサ様、あなたが本当にタバサ様であるなら、お母様はビアンカちゃ…ビアンカ様であるはずなのですが…」
「ビアンカさんって、山奥の村の方ですよね…?」
「確かに、ビアンカ様のご出身はそちらですが…。…ちょっと、これは、坊ちゃ…アベル王に問いたださないといけないようです。」
「どういうこと、サンチョ?」
レックスが興味津々に聞く。
「これは大人の事情というかなんといいますか…。お母様には内緒にしたほうが良さそうです。もし、お母様がこのことを知ってしまったら卒倒してしまうかもしれません。
(むしろ、坊ちゃんの生命が危ういような…。)ところで、レックス様?この子が私たちの知るタバサ様でないとしたら、私たちの知るタバサ様はどちらへ…?」
「あっそうだ、じゃあ僕は本物のタバサ探してくる!サンチョはここで待ってて!」
レックスは部屋を勢いよく出て行った。
「(うーむ、坊ちゃんに限ってそんなことは…)」
「(もう、何がどうなっているのか良く分かんないよぅ!というより、私の知るお兄ちゃんはどこにいるのよぅ!)」