mirror氏のSS…2

「サンチョ、タバサどこにもいないよぅ…。」

レックスが部屋に戻ってきた。状況が理解し始めたせいか、やや半泣き状態である。

「と、すると、うちのタバサ様はこちらの子と入れ替わってしまったということでしょうか?

 …青髪のタバサ様、先程、レックス様がこちらに来られる前は何をしておられましたか?」

「えっ、はい…。…そこの化粧台の鏡で自分の顔を見ながら、『かわいくなれる呪文とかあったら便利なのになぁ』って思っていたら、突然鏡が光り始めて…。光が消えたらもう今の状態で…。」

タバサはちょっと恥ずかしげに答えた。

「(こちらのタバサ様もお年頃なんですなぁ。)ふーむ…。わたくしめはあまり呪法とかには詳しくないのですが、こういったことがあったとき、そうなる前と同じことをすれば元に戻れるという話を聞いたことがあります。試しに同じように鏡の前で念じてみてはいかがでしょうか?」

「分かりました…。やってみます。」

そう言うと、タバサは鏡に向かって、自分の顔をじっと見た。

レックスとサンチョは部屋の外に出てその様子をうかがっていた。

「あれ、うまくいかない…。なんで…。」

タバサは何度も鏡に向かって魔法力をぶつけてみた。しかし、鏡は一向に光る気配はなかった。

様子をうかがっていた二人も部屋に戻ってきた。

「むぅ、何か他にも条件があるのかもしれないですな。もしかしたら、もう元には戻れないのかもしれません…。」

「そ、そんな…。」

タバサはがっくりとうなだれる。両目からは涙が溢れている。

「え、ということは本当のタバサにはもう会えないってこと?…そんなの、いやだぁっ!!」

レックスはそう叫ぶと、大声で泣き出してしまった。

「あなたは妹がいなくなっただけだからいいじゃないっ!!…私なんかもう二度と自分を知っている人に会えないかもしれないのに…。」

タバサもそう言うと、大声で泣き始めてしまった。

二人がここまで泣くのは、それぞれ自分の母親に会えたとき以来、いやそれ以上だろうか?

「まぁまぁ、落ち着いてください、二人とも。まだ、元に戻れないと決まったわけではありませんし…。明日になったらお父様もお母様もお帰りになられます。お父様はこのような呪法にも詳しいはずですので、そのときにいろいろ聞いてみてはいかがでしょうか?ただ、タバサ様にお願いがあるのですが、あなた様のお母様がフローラ様であること等はビアンカ様や他の人には内密にお願いできますか?こういうことはあまり公にすることではありませんし、ビアンカ様の耳に入られましたらパニックを起こされて(坊ちゃんの命がなくなって)しまうかもしれません。あくまで髪を青く染めてしまったということでお願いします。」

「グスッ、…はい、分かりました、グスッ。」

タバサも子どもとはいえ王族の人間である。こういったことは心得ている。

「もう、夜も遅くなりました。今日はもうお休みになられて、明日これからどうするか考えましょう。タバサ様は私どものタバサ様の部屋でお休みください。」

と、言ってサンチョはタバサを部屋に案内した。

青髪のタバサは金髪のタバサの部屋で寝ることになった。

とはいえ、こんなことがあった夜だ。寝付けるわけがない。

「なんで、こうなってしまったんだろう…。やっぱり、お母さんがいない隙にあんなことしていたのがいけなかったのかな?…それにしても、何から何まで同じ。部屋の場所も部屋の内装も自分の知っている人の名前も…。違うのは、お母さんの名前とお兄ちゃんの髪の色だけ…。」

タバサはベッドに潜りながら考えていると、コンコンッとドアをノックする音が聞こえた。

「…誰?」

「レックスだけども、入ってもいいかな?」

レックスとタバサは12才の誕生日をきっかけに別々の部屋になったがそこまで同じだった。

「ん…いいよ。鍵は開いているよ。」

タバサはそう言うと、レックスは少しうつむいた感じで部屋に入ってきた。

「タバサ…さん。さっきはごめん…。君の気持ちを考えていなかった。僕の妹も今の君と同じ理由で苦しんでるかもしれないのに…。」

「いいのよ、レックス…君。もともとを考えると私がいけなかったんです。私が勝手にお母さんの部屋に入って勝手なことしていたから…。私も私のお兄ちゃんに心配かけてしまっているかもしれないのに…。」

「…でさ、お詫びというか、なんというかさ、…その、…こちらにいる間だけでいいからさ、………僕を実の兄のように思って欲しいんだ。今の君には頼れる人がいないと思う。…だから、僕だけでも君の頼りになりたいんだ。」

「…ありがとう、…すごくうれしいです。それじゃあ、早速一つお願いをしようかな…。」

「ん?なんだい?」

「その、えー…と、………今晩、一緒に寝てくれないかな…。」

「え…!?」

「…実は本当はすごく怖いし寂しいの…。このまま一人ぼっちになってしまうことを考えると…。だから…。」

「…いいよ。(本当は僕も一人じゃ眠れなくて部屋を訪ねてきたわけだし…)」

「…本当?ありがとう」

レックスはタバサのベッドに入った。そして、ベッドの中で手を握り合いながら眠りについた。

…そして夜が明けた。


戻る