ペコ氏のSS…10

それは、レックスが王家の証の試練から帰ってきて3ヶ月が立ったある1日の出来事である。

「レックス、起きなさーい。朝ごはん用意出来てるわよー。」

母ビアンカの声で目を覚ますレックス。しかしベッドから出ることのできほどの寒さを感じた。

もそもそ起き上がるレックスは普段着に着替え、家族が集まる食卓へ向かう。

「おはようございます。」

朝の挨拶を済ませ席へ座ると、隣に座っているタバサが声をかける。

「おはよう、お兄ちゃん。眠そうだね?今日はご飯を食べたらコリンズくんの所に遊びに行くんだよね?あとでお部屋に呼びに行くね。」

今日の朝食はサンチョが作ってくれたクロワッサン。焼きたてのいい香りを楽しんでいるタバサとは違い、まだ眠気の抜けない顔で口へと運ぶレックス。

朝食を終えたレックスは部屋へと戻りタバサが呼びに来るのを待つ。

しばらくしてタバサが部屋へ訪れると中に入るなり、レックスはタバサのほっぺたを両手で軽くつねる。

「ひゃ、ひゃひふるほ?ほにいひゃん!?」

クスクス笑いレックスはタバサの唇に優しくキスをする。タバサはビックリして

「もう、お兄ちゃん!もう少しムードのあるキスは出来ないの?」

「ごめんごめん。あんまりタバサの唇が柔らかそうだからつい・・ね?」

真っ赤な顔をさせてタバサはレックスにこう言い放つ。

「・・・バカ・・。お兄ちゃんなんかもうキライよーーだ!」

タバサの突然の一言にレックスは困った顔をさせて

「えー?本当にキライになっちゃった?」

「うん。キーラーイー!!」

タバサはレックスにイーッとしてみせた。普段は逆の立場な故に今だと言わんばかりの日ごろの恨み?をはらすかのように彼女はレックスをイジめる。

「本当に本当にキライになっちゃった?僕はこんなにタバサのことだーいすきなのに??」

そう言って両手を目一杯に横に広げたレックスにタバサは少しひるみ、レックスは続けてこう話す。

「それに、もうギューッってしたりキスもできないんだよ?タバサはそれでも平気なの??」

その言葉に絶望するタバサ。慌ててレックスに

「へ、平気じゃ・・・ないです・・・。もう!そんな簡単にお兄ちゃんのことキライになれるわけないの知ってるくせにー!お兄ちゃんって本当に意地悪なんだから!!。」

「アハハ、ごめんね、タバサ。さぁ、コリンズくんの所に行こうか。」

少しだけ喧嘩?をした二人だが、レックスの事が大好きなタバサにはやはり無理がある嘘だったのであろう。すぐに仲直りをしてルーラでラインハットへと向かったのであった。

ラインハットに到着した二人は門番の兵士に挨拶をして中に入り、通い慣れた道を歩くように二人はコリンズの部屋へと足を運ぶ。

「こんにちは、コリンズくん。」

「よぉ!レックス、タバサちゃん。あれ?タバサちゃん。しばらく見ないうちに胸大きくなった?」

二人の関係のことを唯一知っているのは今のところコリンズだけ。いきなりの言葉にタバサは

「もう!会うなり何言ってるの!?」

二人が笑いながら会話をしているのをレックスは横目で見ながら部屋の中央に置かれてある椅子に腰掛けクスッと笑いながら一言。

「僕のおかげじゃない?」

その言葉にタバサは顔を赤くさせ

「お、お兄ちゃんまで!ま、まだ・・そ、そんな風なことしてないじゃない!!」

墓穴を掘ってしまったのか、タバサはそのまま黙り込んでしまった。コリンズは右手で顔を仰ぎながら

「へーへーお暑いことで!ったく、最近めっきり寒くなってきたってのにお前らがくると暑くてしょうがねぇや・・・!」

と言ってタバサの顔を見る。

3人の楽しい会話もそこそこに、教会の鐘がお昼を知らせるようにラインハットの城下町に鳴り響く。

「そうだ、二人とも。昼飯食ってくんだろ?」

「そうだね。タバサ、ご馳走になろうか?」

二人の会話のあとレックスはタバサの方を見つめると、タバサも笑顔でコクッとうなずく。

コリンズの部屋をノックする音が聞こえ扉が開くと、中から小さな女の子が顔を覗かせる。

「お兄しゃま、お母しゃまがお昼ご飯の用意ができましたわよって言っておりましたわよ?」

その小さな女の子はヘンリー・マリアの娘であり、コリンズの妹。名前はカリン

「おーカリン、ありがと。今行くよ!それより、お兄ちゃんのお友達に挨拶を忘れてないかい?」

コリンズは妹カリンの頭を優しく撫でながら微笑みかける。

父ヘンリーとは違い、礼儀作法に厳しい母マリアの血を強く引いているカリンはしっかりとした女の子で、頭も良く、ラインハット始まって以来の秀才時として将来が楽しみな若干7歳、

初恋の相手は父ヘンリー。夢見るプリチーガール。

「レックスしゃま、タバサしゃま。こんにちは。」

両手でドレスの裾を軽く摘み二人に軽く会釈をするカリン。二人もそのあまりに無駄の無い姿に少し緊張した様子で挨拶を済ませる。

「こんにちは、カリンちゃん。」

「こんにちは、カリンちゃん。しばらく見ない間に大きくなったね!」

久しぶりの再開に喜ぶカリン。4人が部屋をあとにしようとした時、コリンズがレックスを引き止め

「あ、悪い2人とも。ちょっくらレックスに話があるから後で行くよ。」

タバサとカリンが先に食卓へ向かう様子を見送ったコリンズはレックスにこう言う。

「なぁ、レックス。お前・・・今幸せか?実の妹と・・・その・・愛し合うことになって・・・。」

その言葉にレックスは少し考えたあとこう答える。

「うん。僕は幸せだよ!それに、今は兄妹だからとかあまり考えないようにしてるし・・・。どうしたの?」

思い詰めた様な顔をするコリンズに、レックスは心配して聞いてみた。

「ああ・・・オレ・・・今ならお前の気持ち・・・すっげーよくわかるんだ・・・。」

「ど、どうゆう意味?」

「ん・・ああ・・ホラ、そのなんだ?・・・妹っていいよな・・・ってさ・・・。」

「!?!?!?!?!?!?!?!?」

レックスは混乱している。

「アハハハハハハ!」

コリンズの甲高い笑い声でレックスは正気に戻る。

「ココココ、コリンズくん?ほほほほ、本気なの?」

動揺を隠せないレックスは笑い続けるコリンズの肩を掴み前後に揺らしながら叫ぶ。

「アッハハハッハハハハハ、まあ、それより早く昼飯行こうぜ♪」

人のことはとやかく言えないレックス。ここはコリンズくんの洒落が効いたジョークだと自分に言い聞かせ、

マリアが作ってくれたシチューを食べるが、まったく味わう余裕などなかったのであった。

二人が城に戻った時には、辺りはすっかり暗くなっており、肌身にしみる寒さが二人の距離をより一層近づけていた。


城内がすっかり寝沈んだ頃、レックスは喉の乾きに目が覚め、食堂へ飲み物を取りに部屋を出る。

「う〜寒い寒い・・!・・・あれ?タバサの部屋まだ明かりが点いてる。」

そう言ってレックスはタバサの部屋の前に立ち、ノックをする。

「タバサ?まだ起きてるの?はいるよー。」

扉を開けて中に入ると、タバサが机に向かい本を読んでいる。レックスが来たことに気づき、振り返るタバサ。

「あ、お兄ちゃん。うん、この本読んだらもう寝ようと思って・・。」

「身体冷えちゃうよ。何の本読んでたの?」

レックスはタバサに近づき、本を覗き込む。

「えっと、今日カリンちゃんに借りた本なんだけど・・。あ、何か暖かいものいれるね。ここ、座って。」

「ああ、ありがとう。」

タバサは立ち上がり、ポットへ手を伸ばす。カップに注ぎ込んだ瞬間、タバサの大好きなダージリンティーの香りが部屋中を包み込む。

「はい、どうぞ。」

「うん。ありがとー。難しい本読んでるんだねーカリンちゃんも・・。なになに、『自分を支え人を守れる強さを身につけるということは弱さそのものを知ることでした

 だからこそ"あるがままに"と 人の喜びも悲しみもすべてを包みながらゆらゆらと流れる時の中で

 生きることの意味も死ぬことの答えも  流れる涙もこぼれる笑顔も あるがままに 』・・・なるほどー・・・。」

タバサはクスクス笑いながらレックスに問いかける。

「『なるほどー』って本に書いてある文に納得しちゃって・・・フフ。」

その言葉にムッとしたレックスは

「あータバサ今僕のことバカにしたね?いいかい、『生きることの意味』って言うのはねー・・!」

レックスは立ち上がりタバサの背後にスタスタ歩き後ろからタバサをギュッと抱きしめる。

「・・・僕がタバサに今こうしている事かな。」

タバサは頬をピンク色に染めながらレックスに

「じゃあ、『死ぬことの答え』っていうのは?」

しばらく考えた後、レックスはタバサの身体にまわした手をスッとどけて

「もうギュッてしてあげられない事・・・。」

二人の間に少し冷たい風が通り過ぎたあと、タバサがレックスに向かって

「もー。そうやってお兄ちゃんにいつも騙されちゃうのよねー私って・・・。」

先ほどまでピンク色だった頬を今度はプクーッとふくらませ、タバサはレックスにキスをする。

「そういう口には、お仕置きです・・・。」

こうしてグランバニアの夜は静かに深まっていく。

やげて訪れる二人の試練を、この時誰が想像できただろうか・・・。


DQ外伝〜プロローグ〜 完


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