ペコ氏のSS…13

DQ外伝〜恐怖〜

あまりに巨大な力に、レックスは何度も逃げたくなるのをこらえ、エスタークに呪文を唱え続ける。

「ベギラマー!!」

しかし、先ほどからもう一歩の所で、何か見えない壁がエスタークを包んでおり魔法によるダメージは期待されなかった。

ならば剣でと斬りかかるレックス。幾分かのダメージは与えられるものの、致命傷には及ばずにいた。

それもそのはず、エスタークの自己治癒能力はあまりにも高く、みるみるうちに傷が回復していくのである。

「ハァハァ、このままだと埒があかないや・・・。でもおかしいな・・何で向こうは攻撃してこないんだ・・?」

息を荒々しくさせながら呟くレックス。その質問に答えるかのようにエスタークが初めて口を開いた。

「人間よ・・・。無駄なことだ・・・。主では予を再び封印することはできないのだ・・・。」

何故か悲しそうな目をするエスターク。しかし次の瞬間、両手に持つ剣を縦横無尽に振り回す。が、その全てを紙一重でかわすレックス。

「まだ、まだやってみなくちゃ・・・わからない!!」

それは自分に言い聞かせるかのような叫び声だった。それでも力の差は歴然とされており、エスタークの攻撃をギリギリの間合いで避けながらレックスはたいしてダメージを与えられない攻撃をしかけ続ける。

「ダメだ・・・このままじゃ・・・ハッ!天空の剣があった!!これをアイツの眉間に・・・。」

エスタークの力の波動により少なからずパニック状態に陥っていたレックスだが、やがて冷静さを取り戻し、自分のやるべき事を思い出す。

それからのレックスの動きは『蝶のように舞、蜂のように刺す』という言葉通り、エスタークに地味ではあるが確実にダメージを与えていく。

「グヌゥゥ、まさかここまで人間がやりおるとは・・・。」

「もう少し・・もう少し・・・。」

レックスがエスタークの膝が折れる一瞬をうかがっている。それから何度かの攻撃を仕掛けた後でついにエスタークの膝が地面に着く。

その一瞬を見逃さない勇者レックス。瓦礫を足場に軽やかに飛び、エスタークの眉間に向けて天空の剣を突き立てる・・・!

「もらったあああぁぁぁぁぁ!!」

レックスは気がつくと天井を見ていた。全身に痛みが走るのを覚えると、上半身を起し、まっすぐエスタークの方を見つめる。

そこには眉間に天空の剣が刺さったままのエスタークが深い、深い眠りについてるように見えた。

レックスはゆっくりと立ち上がり、外に出ようと出口を探す。それはエスタークに背を向けた瞬間だった。

一瞬の風がレックスの左肩を掠めると、その左肩から鮮やかなほどの赤い血が吹き出てくる。

「そんな・・・まさか・・・。」

恐る恐る後ろを振り返るレックス。すると、眉間の天空の剣は刺さったままのエスタークが一歩、また一歩とレックスに向かって歩み寄る。

その姿に恐怖し逃げ惑うレックス。だが、エスタークの剣閃がじわじわとレックスを確実に追い詰めて行く。

「ハァハァ、・・怖い・・・父さん・・・母さん・・・・助けて・・・!助けて・・・タバサ!!」

追い詰められ、腰を抜かすレックス。震える身体、目からは涙さえ流している。

それはレックスが生まれて初めて感じ取る確実な『死』・・・。

エスタークが両手を振り上げ、

「なかなか楽しめたぞ、人間よ。しかし予ももういかんせん飽きてしまった・・・。さらばだ・・!」

そう言って両手に持つ剣をレックスに向かって勢いよく振り落とす。


DQ外伝〜恐怖〜 完


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