DQ外伝〜ヒカリ〜
暗い、暗い闇の中。レックスはまるで無重力の中を漂うに身体を浮かしている。
目の前から暖かな光が一筋、レックスを照らす。
それは、とても懐かしく、とても心が安らぎ、とても幸せな気持ちになる光。
レックスは気づく。その光の正体を。そして自らに言う。『目を覚ませ!』と・・・。
重たい目蓋を開くレックス。すぐ頭上にはエスタークの剣が。
そして、エスタークは身体を小刻みに震わし、こう叫ぶ。
「ガァァッァ!な、何者だーー!!予の・・・予の邪魔をする奴はーーッッ!!!」
その姿を見たレックスはすぐさま立ち上がり、エスタークと距離を置く。
まだ身体の震えが止まらないレックスではあったが、エスタークの身動きを封じられている隙に回復呪文を唱える。
「なんでだろ・・・急にタバサを抱きしめたくなったよ・・・。」
涙を拭うレックス。エスタークがこちらを振り返る。どうやら身動きがとれるようになった様だ。
不思議とレックスの身体から恐怖は消えてきた。あの暖かい光のおかげなのだろう。
エスタークの攻撃を避けながら反撃のチャンスを窺うレックス。
「まずは・・・剣を取り戻さないと・・・。」
エスタークの眉間をギッと睨んだ後、レックスの頭の中に二つの魔法が浮かんだ。
「フバーハ!!」
レックスが魔法を唱えた瞬間、エスタークが口から灼熱の炎を噴出した!
その魔法の効果でダメージを最低限に抑えられたレックス。しかし、もう1つの魔法を唱えるにはあまりにも今の場所では不利であった。
「空が・・・空が見えれば・・・!」
「ハハハハハ!人間よ!先ほどまでの恐怖はなくなったようだな!!しかし、余には勝てん!!」
エスタークはまだ全力でないことはレックスもすぐにわかった。向こうが全力でない以上、こちらにまだ勝機はある・・・だが、それはほんのかすかな勝機。
またもや危機が訪れる。エスタークのイオナズンで上空へ逃げざるをえなかったレックス。それに追い討ちをかける様にエスタークが右手で斬りかかる!
だが、次の瞬間、エスタークの背中で大きな爆発が起きた。イオナズンだ。
エスタークの後ろの人影がレックスに向かってこう叫ぶ。
「大丈夫?お兄ちゃん!」
それは紛れも無く正真正銘のタバサであった。
「何故ここにタバサが?それに・・・髪が・・短い・・・。」
そんな考えをしているレックスにタバサは駆け寄ってくる。
「よかった、間に合ったみたい!・・・それにしても、エスタークってこんなに強いのね・・・。
私のイオナズンでも足止めすらならないなんて・・・。」
レックスはタバサに問いただす。
「なんで?なんでタバサがここにいるの?どうやって過去に?」
頭が混乱しているレックスであったが、エスタークがこちらに向けて輝く息を噴出す。
「あとで説明するから!」
そう答えてタバサはレックスの腕を掴みルーラを唱える。
突然ではあるが、タバサのルーラは今まで立ち寄ったことのある場所だけではなく、
今居る空間の中を自在に移動できる瞬間移動のような性能も持っているとここに記しておく。
タバサに腕を掴まれたレックスは、なんともいえない安堵感に包まれる。
それは、嬉しさにも似た安らぎ。タバサが側にいるだけで、レックスは力がみなぎってくるのを感じる。
「あのね、お兄ちゃん。」
エスタークに気づかれないようにタバサが口を開く。レックスはにやけてしまっている口を戻し、タバサの声に耳を傾ける。
「私ね、お兄ちゃんが『一緒に来てくれ』って言ってくれたら、ついて行くつもりだったの。でもお兄ちゃんは『危ないからダメだ』って言った。
私はお兄ちゃんの側にいたかったのに。お兄ちゃんの力になりたかったのに。
お兄ちゃんと一緒ならどんな困難だって絶対乗り越えられるって信じてた・・!なのにお兄ちゃんは・・・。」
涙ぐむタバサ。レックスは心を打たれた一言だった。そして気づく。何故タバサが怒っていたのかを・・。
「ごめん・・・タバサ・・・。」
その言葉しか口からは出なかった。そんなレックスにタバサは平手打ちをする。
「これで・・・許してあげる・・・。」
「ありがとう・・・。」
殴られた右頬は痛かった。しかし、レックスは思う
「(タバサの受けた心の痛みはこれ以上だったのかもしれない・・。いや、痛かった違いない!もう怖がらない!僕はタバサを守る!タバサとずっと一緒だ!だからエスターク!!お前をここで・・・倒す!!!)」
レックスはタバサの右手をギュッと握る。
「タバサ・・あいつの注意は僕が引く。だから、天井を壊してもらえないか?時間はかかってもいいから・・・。」
タバサもレックスの左手をギュッと握り返す。
「まかせて!とっておきのがあるわ・・・!!」
二人はうなずき、レックスはタバサから離れ、エスタークに石を投げつける。
「こっちだ!エスターク!!」
レックスの方を振り向くエスターク。少しだが口元が緩んだかのように見えた。
DQ外伝〜ヒカリ〜 完