ペコ氏のSS…19

DQ外伝〜初恋〜

ある日のラインハット、天気の良い昼下がりのバルコニー。

空を見ながらため息をつく少女が一人。その名はカリン。

「どうしたの?元気ないわね、カリンちゃん。」

その姿を見つけたタバサがカリンに声を掛ける。すると、カリンはタバサの方を向き

「こんにちは、タバサしゃま。・・・やっぱり・・・そう見えますか?」

にっこり微笑んでそう答える。タバサはカリンに近づき、一緒になって空を眺める。

「うん、さっきからため息ばかり出てたわよ?」

「タバサしゃま・・・よかったら・・・お話聞いていただけますか?」

突然の申し出に戸惑うタバサ。カリンはそんなタバサを見てこう続ける。

「・・・あ、やっぱり・・・いいです・・・。」

そんな寂しそうな目をしたカリンにタバサは慌てて

「あ、うん。お話・・・聞くわよ!」

その言葉を聞いて笑顔を取り戻すカリン。そして二人はカリンの部屋へと足を向ける。

「お紅茶、お入れしますわね。」

「あ、ありがとう・・・(この子・・・本当に7歳なのかしら・・・)。」

そんじょそこらの7歳児とは違い、考え方も行動も立派な大人顔負けのカリン。

かくいうタバサも同じ歳の頃には、行方不明の両親を探す旅に出ており、やはり少し違う7歳児だったわけだが・・・。

「お待たせいたしました。冷めないうちにどうぞ。」

「うん、ありがとう。・・・・・・あ〜おいしい・・・!カリンちゃんの紅茶おいしいよ!」

「えへへ。」

ふと7歳児の顔に戻るカリン。愛くるしいその眼差しは兄コリンズを危ない道へと誘う誘惑の瞳。しかし、このお話ではそのような展開にならないのであしからず。

「で、お話ってのは何かな?カリンちゃん。」

少しお茶を飲んだ後、タバサがカリンに問いかける。

「実は・・・タバサしゃまは・・・その・・・好いてる殿方はいらっしゃるのでしょうか・・・?」

「ええ・・・うん。いるわよ・・・とっても大切な人が・・・。」

「本当ですか?よかったです・・・。あの、よろしければ・・・タバサしゃまの初恋の時のお話を・・・聞きたいのですが・・・。」

もじもじ恥ずかしそうに答えるカリン。タバサも急な申し出に少し考えながら、口を開く。

「わたしの・・・初恋はね・・・・・・・・・。

あれは、たしか6歳の時だったかな・・・。

すごく大好きな人がいて、すごく一緒にいたくて、その人が笑うだけで、すごく幸せになれて・・・。

その人に触れたら、まだ小さかったわたしの身体が真っ赤に熱くなって・・・。

・・・でもね、ある日気づいたの。

その人を好きになればなるほど、すごく・・・心が切なるって。・・・毎晩声を殺してお部屋で泣いてたっけな・・・。

それでね、よく頭の中で「そんなに疲れたなら好きになるのやめたら?」って、

もう一人のわたしが言うの・・・。

でも・・・その人にはわたししかいないの!なんて言えなかったけど・・・

あの時のわたしにはその人しかいらなかったから・・・。あきらめれなかったなぁ・・・。

それでね、その人にもわたしにもやらなくちゃいけないことがあってね、二人である日に

「一緒にがんばろうね!」って約束したの・・・。だから今までがんばってこれたのかな・・・。」

カップにはいった紅茶も熱を冷ます頃、コリンがタバサの話にうっとりしていた自分から戻り

「素敵ですわね・・・。そのお方がレックスしゃまですわね?」

ズバッと真相をついたカリンの一言。

「ええ?あ・・・う、うん・・・。で、でもカリンちゃんなんで・・・その・・・知ってるの?」

しどろもどろに聞くタバサをクスクス笑いながらカリンは答える。

「ウフフ、見ていればわかりますわ!レックスしゃまのタバサしゃまを見る目はとてもお優しいですもの・・・。」

「そ、そうかな〜・・・アハハ・・・。」

そう言って冷めたカップに手を伸ばすと、カリンが

「あ、お紅茶冷めてますわ!今新しくお入れしますから・・・。」

と言ってタバサのカップを持って立ち上がる。

「あ、ありがとう・・・。」

すると突然部屋の扉が開き、コリンズが顔を覗かせる。

「おーい、カリンー!タバサちゃん知らないか?」

カリンはパタパタとコリンズの元へ走り寄り

「お兄しゃま!レディーのお部屋にノックもせずに入らないで下さいっていつも言ってますでしょ!?タバサしゃまは今カリンのお話し相手をしてくれてるんですわ!」

部屋を追い出そうとするカリン。コリンズは無理やり押されながらも

「あー悪かった!悪かったって!タバサちゃん、レックスの奴が探してたぜ!もうそろそろ帰るんだとさー。んじゃ、伝えたからなー!」

「うん、ありがとう!ごめんね・・・カリンちゃん。おいしい紅茶はまた今度ごちそうしてね!」

少し残念な顔をするカリン。部屋を出ようとするタバサを引きとめ

「あ、あの・・・もしよろしければ・・・これから『お姉しゃま』とお呼びしてもよろしいでしょうか・・・?」

タバサはニッコリ笑ってカリンの頭を撫でる。

「うん、もちろん!わたしもカリンちゃんみたいな妹欲しかったの〜!」

お互い喜びながら別れの挨拶を済ませる。

タバサの背中を見送ったあと、カリンは一人部屋に戻り、窓を開け空を見上げる。

「お父しゃま・・・カリンは・・・カリンはお父しゃまのことが・・・。」

青く澄み渡る空を飛び立つ二つの光。その光を見つめながら、カリンは大きく、大きく手を振り続けた・・・。


おわり


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