ペコ氏のSS…3

DQ外伝〜約束〜 第3話 前編


昇った太陽が西に傾き沈み始めようとする頃、再びラインハットではコリンズの部屋の扉が開きタバサが出てくる。

「いろいろお話聞いてくれてありがとうね、コリンズくん。それにマリアおばさまにお菓子まで持たせてもらって。」

ちいさな白い紙袋に包まれたマリアお手製のクッキーをコリンズに見せると、コリンズは前髪をかき上げながらこう答える。

「おう、いいってことよ!それより早く帰りな。おじさん達心配するぜ?」

「うん。ありがとう。あーあ、コリンズくんが私のお兄ちゃんだったらこんなに悩まなくて済むのになぁ・・・。」

そう独り言のようにしゃべりながら廊下を歩き始めるタバサ。しかしコリンズには聞こえていたのだろう。ちょっとあきれた顔をして

「ウハー。で、ここの王子がレックスでお前らは結婚するってか?」

「あら、もちろんじゃない♪」

コリンズの話に即答で答えるタバサ。

「おいおい、冗談キツイぜ!オレが勇者ってガラか?」

そう自信満々に話すコリンズ。「それもそうね。」タバサは妙に説得力のあるその言葉にうなずいた。

街の入り口まで見送りに来るタバサとコリンズ。コリンズは辺りを見回し、誰もいない事を確認してからこう話し出す。

「でもよお、タバサちゃん。もしオレが勇者だったとしたら、タバサちゃん・・・オレの事好きになっちゃうんじゃない?」

フゥ・・・少しため息をしたタバサがその質問に答える。

「あのね、コリンズくん。私はお兄ちゃんが勇者だから好きになったんじゃないのよ?お兄ちゃんはお兄ちゃん。私が好きなのは、あくまでレックスって男の子なんだからね!」

「僕がどうかしたの?タバサ。」

「キャアア、お、おおお、お兄ちゃん・・・。どどど、どうしたのよ、一人でこんな所に・・・?」

突然現れたレックスに顔を真っ赤にしながらしどろもどろで話すタバサ。その後ろではコリンズが「しまった」と表現しているのだろう、右手で自分の目を抑えている。

そんな二人を首を傾げながらレックスはこう答える。

「え?ああ、ちょっとコリンズくんに話があってね。・・・それよりタバサ。」

急に自分を呼ぶ声にまだ顔が真っ赤なタバサは少し裏声になりながら

「ナ、なニ?」

「うん、嫁入り前のお前が二人っきりで外の男に会うのは・・その・・・マズイと思うんだ。」

きっと自分のことを心配してくれているんだ。そう確信したタバサはうれしそうな顔をしながら

「え?お兄ちゃん・・・もしかして・・・心配してくれてるの?ちょっと・・・うれしいな・・・。」

そう答えるタバサに、レックスはにっこり笑顔を作ってこう言う。

「もちろん、タバサは僕のカワイイ妹だしね。」

その言葉を聞いてプーッとホッペを膨らましレックスを見つめるタバサ。だがすぐに笑顔を戻しレックスにこう答える。

「ありがと、お兄ちゃん。」

レックスの何気ない優しい自分への気配りが時にうれしく、時には心を痛くさせる。

わかってる。お兄ちゃんは私の事を妹としか見てないことを。でもそれでいいのかもしれない・・・。変に私が「好きだ」と言って今の関係がなくなるのが怖いし・・・。

それに、兄妹ならずっと一緒にいられるし・・・。

そんなことを思いながらタバサはコリンズと楽しそうにおしゃべりをする兄レックスを見つめた。

「あ、コリンズくん。ヘンリーおじさんだけど、たぶんうちのお父さんがルーラで送ってくれと思うんだ。マリアさんにそう伝えといてくれないかなぁ?」

「ああ、わかったぜ。それよりどうする?オレの部屋行くか?」

自分が遅くなる口実を作った。とは一言も言わずに、レックスとコリンズはお城に向かって歩き始めた。

「うん、そうだね。あ、ちょっと待ってて!おーい、タバサー!」

振り返りそう叫びながらタバサの方へ駆け寄るレックス。少し泣きそうな顔をしていたタバサだが、兄が走ってくるのを見るとあわてて笑顔をつくり

「なに?お兄ちゃん?」

と答えるとレックスは

「あのね、ここまでメッキーのルーラで来たんだけど、メッキーの奴どっかそのまま飛んでっちゃってさぁ・・悪いんだけど、一緒に帰りたいから少し待っててくれないかなぁ?」

両手で合掌を作りタバサにお願いをするレックス。その仕草を見てタバサはまた少し頬を紅潮させて答える。

「う、うん。いいわよ。じゃあ私、ラインハットの書斎で本を読ませてもらうから、帰る時になったら呼びに来てね?」

その言葉を聞いて安心したレックスは

「ありがとう!じゃあ一緒にお城まで行こう!」

とタバサの背中を押しながらレックスはコリンズの元へ駆け足をした。

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!転んじゃうよ!」

うれしそうなタバサの顔をニヤニヤ見つめるコリンズ。その顔を見てベーッと舌を出すタバサ。コリンズも駆け足をはじめ、3人が城の中へと消えていく。

レックスとコリンズが部屋へ入り、コリンズがベッドに雪崩れる様に飛び乗ると天井を見上げながらレックス話かける。

「で、大事な話ってのはなんだ?レックス」

「うん、父さんに王家の試練を受けないか?って言われてるんだ。」

そう答えるレックスだが、その言葉を聞いてコリンズは苦笑しながら

「ああ、その話ならタバサちゃんに聞いたぜ。『お兄ちゃんが何を考えてるのかわからない〜!』ってな。で、どうすんだ?受けるのか?

まあ、終わってすぐ王位につけ!なんてことはないと思うけどな。」

天井からレックスの方に視線をかえるコリンズ。レックスもうつむいていた視線を窓の方へと向け、ゆっくりと話し始めた。

「試練・・・受けようと思うんだ。そしてその試練が終わったら・・・タバサに・・・僕の気持ちを伝えようと思うんだけど・・・。

コリンズくんには前に話したよね・・僕がその・・タバサが好きだって・・。」

ゆっくり窓に向かって歩き始めるレックス。

「伝えるだけでいいんだ。それに、アイツには・・・他に好きな人いるって知ってるしさ。」

その言葉を聞いてコリンズは「どれだけ「お前らはお互い同じ気持ちなんだ!」って言いたかったことか・・・。

しかし、レックス、タバサから『他言無用』と約束しているコリンズ。そしてコリンズも「オレがレックスにタバサちゃんも同じ想いなんだぞって言うわけにはいかないんだよな。コイツが、本人に伝えることが大切なんだ・・・。」

そんなことを思いながらコリンズはレックスの肩をポンッと叩きながら

「そっか・・・。お前の事だ。いろいろ考えたんだろうな・・。」

そうレックスが言った後、コリンズは彼の話を何度もうなずきながら聞くも、自分の心の中の葛藤と・・・闘っていた。

すっかり日も暮れてしまい、そろそろ城に帰ることをコリンズに伝えたレックスはその足でタバサのいる書斎へと向かった。

「タバサ。そろそろ帰るよ?」

書斎の扉を開け、机に向かっているタバサに話掛けるレックスだが彼女の返事がない。

「タバサ?あ、いた。ったく・・こんな所で寝てると風邪引くぞ!おーい、タバサー。」

机の上には何冊か本が積んであり読みかけの本は開いたまま、差し入れでももらったのだろうグラスの表面は汗をかいたまま置いてあり、そのすぐ横にタバサはスースーと寝息を立てて眠っていた。

「タバサ・・・。」

タバサに近づき、彼女の髪をそっとなでるレックス。

「起きないと・・・キスしちゃうよ?」

そう耳元で囁くとピクッと反応したあとタバサからは思いもよらない答えが・・・

「ん・・・ぃぃょ・・・。」

それを聞いて急に顔が赤くなるレックス。もちろん半分は冗談で言ったものだ。そしてもう半分は・・・。

「(ね、寝言だよね。でも本当に起きてるなら・・・途中でちゃんと起きるはず・・・。)」

そう自分の中で言い聞かせ、タバサの小さく、淡いピンク色の唇に顔を近づけるレックス。

「(っく、この体勢・・・つらい・・・。)」

寝ているタバサの右側に立ち、上半身だけを屈折させて彼女の寝息がレックスの鼻にかかる距離まで来たとき・・・

「(も・・・もう少し・・・。)」


DQ外伝〜約束〜 第3話 前編・完


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