DQ外伝〜〜約束〜第4話 後編
扉を開け中に入るとそこには参拝者はおろか、神父さえいない無人の教会であった。
開口一番レックスが
「あれ?誰もいないよ?コリンズくん・・・。」
「出掛けてるのかしら・・・。でもこれだと結婚式ごっこできないわね?他で遊びましょ!ね?」
ホッとしたタバサは二人の腕の裾を掴みながらそう答えた。
右手をあごにつけて考えるコリンズ。彼にとってはごっこだろうとタバサとキスするチャンスである。ここでやめるわけにはいかなかったのだろう。とっさに
「しょうがない、レックス!お前神父の役やれよ!」
突然の申し出に驚くレックス。しかし、ここはアレのためだ。と軽いノリで
「うん。わかった!やってみるよ!」
タバサが乗り気じゃないのはわかっていた。彼女のそんな顔が目に入るレックスであったが、教会の祭壇にあがり
「えーでは、今から新郎コリンズくんと新婦タバサの結婚式をはじめまーす。」
「ごっこよ!ごっこ!」
くどいようにタバサがレックスに叫んだ。
「わかってるって。じゃあ二人とも、ここまで来て!」
そう手招きすると、コリンズとタバサはゆっくり祭壇の前まで歩きその足を止めた。
「それでは、新郎コリンズ。えっと、辛いときも、悲しいときも、うれしい時も新婦タバサを妻とし愛する事を誓いますか?」
少したどたどしいレックスの神父役であったが何分3人とも実際の結婚式には行ったことがないので「こんな感じだろう」と思いそのまま式は続けられた。
「おう、誓います!」
そう言って親指を立ててレックスに見せるコリンズ。その仕草にうなずき、タバサの方を見つめ
「では、新婦タバサ、悲しいときも、辛いときも、うれしい時も新郎コリンズを夫とし、愛し続ける事を・・・誓いますか?」
レックスは複雑な気分だった。たしかに時が経てばタバサは他の誰かと結婚することはわかっている。それにこれは遊びなんだ。
でも・・・なんでこんなにイライラするんだ・・・と。
しばらく間があき、黙っていたタバサも口を開いて
「は、は・・・ぃ。」
「(よーし、よーし!そしてこのまま愛の口付けを〜〜〜!!)」
コリンズの興奮は絶好頂まで詰めあがった!しかし次の瞬間・・・!
「ち・・誓いません!」
小さな身体から力いっぱいの声を張り上げ、静まり返った教会全体に反響するタバサの言葉。二人はうつむくタバサへと目を移す。
そこには大粒の涙をポロポロと落とすタバサが・・・。そして
「ご、ごめんなさ・・い・・ヒック。わたし・・・ヒック・・やっぱり・・出来ない・・グスッ・・。」
両手で涙を拭いながら床に座り込むタバサ。オロオロする男二人はなんとかしてタバサを慰めようとあの手この手を使う
「あ・・・タバサ、泣かないで、タバサ。もうやめるから、ね?コリンズくん?」
「え?あ、ああ。ももも、もちろんだ。わ、わるかったな、タバサ!」
それでも泣き止まないタバサ。すると入り口の扉が開き、神父の格好をした男が入ってくる。もちろんここの教会の神父であった。
「誰かいるんですか?・・・おやおや、どうしました?お嬢ちゃん。」
優しい言葉をかけながら3人の元へと歩み寄る神父。座り込んだタバサの肩をポンッと叩きレックス、タバサを見てにっこり微笑んだ。
「あ、えっと、その・・結婚式ごっこしてたんだけど・・タバサが、妹が急に泣き出しちゃって・・・。」
そう答えるレックス。すぐ横のコリンズは彼の耳元で
「やばい、勝手に教会はいったこと怒られるぜ?はやく逃げよう!」
と小声で話す。それを聞いてレックスはその場から逃げ出したくなる気持ちを抑えながらこう神父に話す。
「あ、あの。・・勝手に教会に入っちゃって・・・ごめんなさい!」
「バ、バカ!早く行くぞ!」
そう言って走り出すコリンズ。神父は彼を止めることはせず、タバサの頭を撫でたままじっと黙り込んでいた。
「(やっぱり・・・怒られるかな・・・。で、でもタバサを置いて逃げれないし・・・。なんでこんなに泣いてるんだ?タバサは・・・。ど、どうしよう・・・)」
すっと立ち上がる神父とタバサ。まだ泣き止まない彼女だが、レックスの腕の裾を掴んで離そうとしなかった。
その二人を見て再びにっこりと微笑む神父。ゆっくり祭壇へとあがり一呼吸おいて
「君たち、お名前は?」
神父がそう言うとレックスは恐る恐るこう答える。
「レ、レックスです。そして・・こっちは妹のタバサ・・。」
それを聞いた神父。右手の中指でめがねを少しあげると
「コホン、それではこれより神の御名において、レックスとタバサの結婚式を行います。まず、神への誓いの言葉を。汝タバサは、レックスを夫とし、すこやかなる時も、病める時もその身を共にすることを誓いますか?」
その言葉を聞くといつのまにか泣くのをやめているタバサ。じっと神父を見つめ、そして
「はい・・。誓い・・ます。」
その言葉にレックスは金縛りにあったかのように動けなくなった。続けて神父は
「汝レックスは、タバサを妻とし、すこやかなる時も、病める時もその身を共にすることを誓いますか?」
予告もなしに始められたレックスとタバサの結婚式。
先ほどまでレックスの裾を掴んでいたタバサ。いつのまにか彼女の右手とレックスの左手は握られており、その手にギュッと力が入るのを感じる。彼もまっすぐ神父を見つめこう答えた。
「はい。誓います。」
その瞬間、レックスの中のすべての謎が解けた。この心のモヤモヤとした感情。彼女が笑いかけてくれるだけで心のそこから嬉しい気持ちになる自分。先ほどのコリンズとの結婚式ごっこへのイライラ感。タバサに対する妹以上の感情。
そうか・・・僕は・・・タバサのことが・・・
「それでは、誓いの口付けを・・・。」
ハッと我に返るレックス。タバサの方を向くとレックスの顔をじっと見つめている。
「えっと、く、口付けって・・・。」
そう神父に聞くと彼はニコニコして何も話さず二人を見つめる。
「タバサ・・・。」
そう言ってタバサに顔を近づけ勇気を振り絞るレックス。
同じ日に生まれ、父と母を探す旅をし、苦楽を共にし、いつも同じ時間を過ごした二人。
そんな二人が今、一人の男女に戻るその瞬間・・・
すっと背伸びをし、目を閉じているタバサのおでこにレックスは優しく口付けをした。
目をパチクリさせてレックスを見つめるタバサ。そんなタバサに笑顔で答えるレックス。
タバサは顔を真っ赤にしてうつむいた。それでも彼女の右手はレックスの左手を離さない。
それから、教会の外に出る二人。噴水の横にしゃがみこむコリンズを見つけるとすぐさま駆け寄り
「コリンズくん、ごめんね、一人にさせちゃって・・。タバサ・もう大丈夫だから・・・。ね?タバサ。」
「うん・・ごめんね、コリンズくん。コリンズくんの事が嫌いとかそんなんじゃなくって・・・その・・・。」
言いにくそうなタバサを気遣うように顔を上げてコリンズは
「え?ああ。いいってことよ!そ、それよりオレ様・・先に父上の所に戻ってるから!」
そう言ってコリンズはルドマンの別荘へと走り出した。彼の背中を目で追う二人。
コリンズの姿が見えなくなった瞬間、タバサはレックスに
「お兄ちゃん。」
「ん?」
「今度はちゃんとしてね!」
そしてタバサは走りだす。顔を真っ赤にさせるレックス。
「バ、バカ!」
レックスもタバサを追って走り出した。
「えへへ、約束だよー?」
「う、うるさーい!」
二人は走りながら笑った。
そこで目を覚ますレックス。部屋の窓を開けて広く、青い空を見上げながら
「・・・あれから6年か・・・。あいつ、あの約束覚えてるのかな・・。昨日は・・一方的なキスしちゃったけど・・試練が終わって・・・お城に戻ったら・・・。」
そんな誕生日の出来事から思春期を向かえ、大人への道を歩き始めていたレックス。
兄と妹という概念が強く感じられた頃からだろう、徐々にタバサと距離を置くようになった。しかしレックスは気づいた。自分の気持ちをこれ以上偽ることは出来ないと・・・。
そして・・・試練がはじまる・・・
DQ外伝〜〜約束〜第4話 後編・完