ペコ氏のSS…8

その人影は斜面を転げて激しい音を立てた。慌てて振り返るタバサとプックル。

「お、お兄ちゃん!」

そう叫んでうずくまるレックスへと駆け寄るタバサ。

「イテテテ、あ!タバサ!試練・・・おわったよ!」

立ち上がりながらレックスはタバサに笑顔を見せる。プックルがレックスの側まで歩み寄り、頭を足に擦り付け

「フニャ〜、ゴロゴロゴロ」

そんなプックルの頭を撫でながらレックスはニコニコとタバサを見つめる。

レックスの左手の擦り傷に気づいたタバサは彼の手を取り

「ちょ、ちょっとお兄ちゃんケガしてるじゃない!」

「え?大丈夫だよ!これくらい。」

「いいから、診せて!ベホイミッ!」

タバサはあまり得意ではないが回復呪文をレックスの左手にかけた。彼の傷がみるみる癒されていく。


そう、7年という歳月でタバサは苦手であった回復呪文を覚え賢者へと成長していた。


「久しぶりだな・・・タバサに回復呪文してもらうなんて・・・。」

「そ、そうね・・・。」

二人のたどたどしい会話が続き、試練で待ち受けていたコリンズの話に華が咲く。

「えー?コリンズくんと闘ったの?」

「うん、いやー最初はジェリーかと思っちゃってさ!危うくギガデインするところだったよ!」

あんな空が見えない場所でギガデインを使えば洞窟の天井がなくなってしまうのだが、二人はその会話のやりとりにいつのまにか笑い続けていた。

「そろそろ帰らないと・・たしか祝賀会やるのよね?」

「うん、そうだね・・・。」


湖を夕日が赤く染めていく。少し冷たい風が吹く。二人は立ち上がり歩き始める。

しかし、レックスは立ち止まりじっとタバサを見つめ・・・

「タバサ!」

その言葉に振り返るタバサとプックル。

「なぁに?お兄ちゃん?」

しばし沈黙が続き、彼女の髪が風で湖に吸い込まれるように揺れる。

「その・・・僕たち・・・兄妹だけど・・・好きだって言っちゃ・・・駄目かな?」

「え・・・。」

タバサが驚きを隠せない表情でレックスを見つめる。彼女から目をそらすことなく話を続けるレックス

「僕・・・タバサが好きだ!」

その一言に両目から涙が溢れ出てくるタバサ。思わず口を塞いでしまう。

「う、うそ・・・よね?」

タバサは小さな声でレックスに問いかける。しかしその問いに答えるかのようにレックスは首を横に振った。

「わ、わたし・・も・・・。」

そう言ってレックスの元へ走りだすタバサ。

「わたしも・・・お兄ちゃんが・・好き!」

レックスに飛びつくタバサ。その光景に驚くレックスとプックル。思わず抱きとめたレックスは

「え、え?ほんとに・・?」

その問いに無言でコクッコクッとうなずくタバサ。

驚くのも無理はない。レックスはずっと「タバサはコリンズの事が好きだ」と思っていたのだから。そして彼の腕の中には今、長い間憧れていたタバサがいるのだ。

次の瞬間タバサは顔をあげ、レックスを見つめる。

レックスもタバサを見つめ、二人はごく自然にその唇を重ねた・・・

そんな二人を、夕日が赤く、赤く照らしていった・・・

それから1ヵ月後、今日はグランバニア、ラインハット両国が待ちに待った親睦会。

アルスとビアンカ、そしてサンチョが一足先にラインハットへ到着する。

「あの子達、大丈夫かしら?あとから来るって言ってたけど・・・。」

不安な顔をするビアンカにアルスは

「大丈夫だよ。タバサはしっかりしてるし。あ、サンチョ、先に調理場へ行ってお手伝いして来てもらえますか?」

「はい、王様。では、私は・・」

そう言って調理場へ消えていくサンチョ。

一方、グランバニアでは

「おーにーちゃーん!仕度できた?入るよー?」

そう言ってタバサは扉を開けた。部屋の中ではレックスがいそいそとタキシードを着ながらこう呟く。

「あーなんでこんな日に寝坊しちゃうかなー・・。あ?タバサ!僕のネクタイ知らない?赤色の!」

「もーお兄ちゃん!赤のネクタイなら昨日ちゃんと出して机の上に置いておいたでしょ?」

「あ、ほんとだー!さっすがタバサ!」

「なーにが『さすがタバサ!』よ!私はまだお兄ちゃんのお嫁さんじゃないんだからしっかりしてよね!?」

と話すタバサにレックスは

「え?違う・・・の?」

仔犬の様な瞳でタバサを見つめる。そんなレックスにタバサは顔を赤くして

「バカッ!お兄ちゃんの意地悪!もう知らないっ!」

そう言って部屋を出ようとするタバサを後ろから忍び寄り先に扉を閉めるレックス。

タバサは扉とレックスに挟まれ、クルリと彼の方を向く。

「つかまーえた♪」

レックスはタバサに抱きつく。タバサも彼の胸元に顔をうずめ息を吸い込み

「お兄ちゃんの・・・匂い・・・。」

と呟く。それを聞いたレックスはタバサの肩に触れ、引き離しこう言う。

「え?ゴメン・・臭かった?」

それを聞いたタバサは首を横に振り

「んーん、いい匂い!私、お兄ちゃんの匂い大好き!」

と言って再びレックスに抱きつくタバサ。

その姿をコドランとスラりんが頬を赤くして

「グァッ!ガー!(訳:平和だなー)」

「ピキーッ!(訳:だね)」

二人がラインハットへ到着すると、門番の兵士がこちらに近づき

「グランバニアのレックス王子とタバサ王女ですね?コリンズ王子がご用意されたお洋服がこちらに御座いますので、お着替えいただけますか?」

そう言って案内される二人。タバサがレックスに小声で聞いてみる

「ねぇ、お兄ちゃん。ほんっとーに仮装パーティーなのね・・。」

レックスも小声で

「うん・・しかも衣装は向こうで用意してるんだってね・・・。」

不安になってきた二人は別々の部屋に案内され、そこに用意されている衣装に着替え始める。

一足先に着替えがおわるレックス。タバサの着替えている部屋の前まで様子を見にやってくる。

中ではタバサが衣装に着替え終わり、鏡を見つめながら

「な、なんでメイド服なのよ・・・。しかもサイズピッタリじゃない・・!」

そうブツブツ呟いている。そこをレックスが勢いよく扉を開け

「タバサー!着替え終わったー?」

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!いきなり開けないでよ!」

「ゴメンゴメン、でも・・・かーわーいーいー!タバサ!かわいいよー!!」

そう言ってジロジロ見つめるレックスにタバサは顔を赤くして

「や、やめてよー!すっごく恥ずかしいんだから!でもなんでお兄ちゃんはそんな『村人A』みたいな格好で私はメイド服なのよ!」

後ろを向いて顔を覆うタバサ。レックスは近づきこう呟く

「ねぇ、タバサ。ギュッってしていい?ギューッって!」

両手を広げて待ち構えているレックスを見てタバサは

「な、何言ってるの!ここはグランバニアじゃないのよ?誰かに見られでもしたらどうするの?」

小声で囁くタバサ。しかしレックスはニコニコしながら

「大丈夫、それともタバサは僕にギュッってされたくないの?」

と答える。その天使のような悪魔の笑顔にタバサはいつも振り回されていた。それでもタバサは真っ赤な顔でレックスに

「さ、されたい・・・です。」

と言って胸に飛び込む。

「(これでいいのか・・・私・・・。)」

しばらくして部屋を出てくる二人。タバサは気づかれない様にレックスの歩幅に合わせてついて行く。これ以上二人の間に距離が出来ないように・・・。


DQ外伝〜約束〜 最終話・完


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