Scherzo氏のSS…3

タバサの体調が完全に元に戻ったのは、パデキアを飲んでから何日か経った後だった。

「早く元気になって、この子がいっぱい咲いてるところに行ってみたいな…」

そう言ってタバサは、ボクがプレゼントしたパデキアの花を愛しそうに見つめた。

「おにいちゃん、私のために大変な旅をしてくれたんだってね。ホントにごめんなさい…足手まといになってばっかりで…」
「何言ってるんだよタバサ? あの試練の洞窟ではタバサがいたから生きて出てこられたんだよ。 もしタバサがいなければ絶対にボクら2人とも助からなかったと思うよ… でもねタバサ… 2度とあんな危険なマネしないでね…これからこの先何があっても、絶対にキミのことを守ってみせるから…」

「おにいちゃん…」

…と、そこに聞き覚えのある声が話し掛けてきた。

「おやおや、御両人。兄妹というよりまるで恋人同士みたいな会話ですねぇ。おアツイことです」

「あ、あなたは… プサンさんッ!?」

「いやはや、お久しぶりです。勇者レックス殿と、その妹君タバサ殿。早速で恐縮で御座いますが、私をお2人のお父上のところまで案内して下さいませんか?」

ボク達はお父さんのところにプサンさんを案内して、そのままお話を聞いた。

冗談なのか本気で困っているのか分からないプサンさんのお話を要約するとこういうことらしい。

人間の生活を楽しむために、プサンさんは度々天空城を留守にしていたらしいんだけど

今回はポートセルミの名産品「ボトルシップ」を作ることに夢中になっているうちに

『ドラゴンオーブ』を無くしてしまって帰れない、と…

それで『ドラゴンオーブ』のオーラを辿ってみて

どうやらサラボナ近くの火山の内部にあるらしいことは分かったんだけど

1人で入るのは怖いのでボク達にチカラを借りに来たんだそうだ…

「いや〜参りましたなぁ。ビンの中に船を作る!! これがまた意外と上手く出来ませんでね!!絶対マスターしようと集中しすぎたのがいけなかったのか… いやーっはっはっはっは…」

「…仕方ありませんねマスタードラゴン様… 私達がついて行きましょう…」

「いやいやリュカ王、最近はモンスターの動きも少しばかり活発です。あなたにはグランバニアの地をしっかりと守って頂かなくてはなりませんからね。ですから今回は伝説の勇者殿に付き添いをお願いしたいのですよ。よろしいかな勇者殿?」

「はい! 行きます行きます!! ねぇお父さん、良いでしょ?」

「ああ、もちろんだ。気を付けて行くんだよ」

ボクは火山に行く準備をしていると、タバサは寂しそうに話しかけてきた。

「私、もうおにいちゃんと一緒に冒険したいなんてワガママ言わないわ。がんばってね、おにいちゃん…」

「タバサ…」

「だって、付いていったところで、また迷惑かけちゃいそうなんだもん。行かない方が良いのよね…」

タバサはそう言いながら、ボクの旅の準備を手伝ってくれた。

タバサはタバサなりに考えて結論を出したんだろうな…

でも… ボクは敢えてタバサにワガママを言ってみた。

「ねぇタバサ、一緒に行こうよ…」

「ダメよおにいちゃん… だって私、もうおにいちゃんに迷惑掛けたくないんだもん…私のワガママで、一緒に行きたいなんて、もう言いたくないもん…」

「……。タバサ、ボクがタバサと一緒に行きたいんだよ?ボクはタバサに迷惑を掛けられたなんて1度も思ったことなんかないし、いつでもタバサと一緒にいるって、もう決めたんだ。それにさっき言っただろ?これからこの先何があっても、絶対にキミのことを守ってみせるって…だからさ、タバサ… ボクと一緒に来てくれないかな…?」

「お、おにいちゃぁん…」

「…と、そういうワケだからプサンさん、タバサも一緒に行きますからね!!」

ボクは抱きついてきたタバサを受け止めてから、半開きのドアから覗いているプサンさんに言った。

タバサは驚いてボクの腕から離れてしまった…

「え、ええ… それはもちろん大歓迎ですよ。1人より2人、2人より3人ですからなぁ!!」

「良かったね、タバサ!!」

「う、うん…!!」

火山内部に入ったボクとタバサとプサンさんは、プサンさんの感じるオーラの案内で先へ先へと進んでいった。

そしてオーラを辿っていった先には、3匹のアンドレアルが待ち構えていた!!

アンドレアル… この魔物も天空城の図鑑でしか見たことがない… 一体どういうことなんだ!?

そんなことを思っていたら、アンドレアルはこちらに向かって話し掛けてきた。

「どういうことだ? 来るのは1匹だけだと聞いていたが…」

「説明して頂けるかな? エビルプサン殿…?」

な、何だって!? 今こいつら、何て言ったんだ…!!?

ボク達は驚いてプサンさんを見た。

「ククク… まぁ良いじゃないですか… 子供が1人増えただけです。同じことですよ。私達は勇者という究極の身体を手に入れられれば良いんですから…」

「プサンさん!? ど、どういうことですかッ!?」

「いやいや、あなた達は何も知らなくて良いんですよ。親御さん達には、火山で私のために命を落としたということにしておきますよ。クックック…さぁ、やってしまうのです!! アンドレアル達よ!!」

プサンさん… いや、エビルプサンがそう叫ぶと、3匹のアンドレアルは一斉に炎を吐いてきた!!

ボクとタバサは、何がどうなっているのかさっぱり解らなかったけど

とにかく、目の前のアンドレアルを倒さなくてはならない…

相手は3匹、いや4匹か… 1匹ずつ相手にするには分が悪すぎる…

そう考えたボク達は、距離をとって遠くから魔法で攻撃することにした。

「おにいちゃん。今回は私も役に立てそうだね!!」

と、こんな時だっていうのにタバサは少し嬉しそうだ。

「大丈夫よおにいちゃん。こいつら、そんなに強くないわ!! 私、分かるの… 気を付けないといけないのはプサンさんの魔法だけ。だからおにいちゃんは プサンさんにマホトーンをかけることだけ考えて闘って!! アンドレアルは私に任せて!!」

「う、うん… わかったよタバサ!!」

ボクは、アンドレアルにまたがっているエビルプサンに向けてマホトーンが効くまで唱え続けた!!

そしてボクの隣では、恐らく世界最強の魔法使いであるタバサが

両手を前に突き出して、一度に2発のイオナズンを敵の群れに何度も打ち込んでいる!!

「こ、こんな馬鹿な…」

「エビルプサン殿… 勇者とは… あの娘のことだったのか…?」

「ぐぎゃあああああああぁぁぁぁ……!!!!」

アンドレアル達の断末魔が火山に響き渡り、ボク達は攻撃をやめた。

それと同時にエビルプサンが一瞬でタバサの目の前に現れた!!

そして、今までの声とは別の、どこかで聞いたことのあるイヤな声色でタバサに言った…

「ほっほっほ… 素晴らしい魔力です…そのチカラ、大いに利用させてもらうことにしましょう…」

そう言ってタバサの腕を掴んで魔法を唱えた!!

そんな… マホトーンが効かなかったのか!?

「タバサ!!」

「お、おにいちゃん…!! きゃあぁぁぁぁぁぁ………」

何だ… 何が起こったっていうんだ…!?

今まで目の前に居たはずのタバサは消え、エビルプサンは倒れている…

タバサ… タバサはどこだ…!!!!

「う… うぅ……」

エビルプサンが呻き声をあげたので、ボクは天空の剣を喉元に突き付けた!!

「この野郎… タバサをどうした!! タバサに何をしたッ!!?」

「ま、待つのだ… 勇者よ…」

プサンさんは、さっきのイヤな声ではない、マスタードラゴンの声で話し掛けてきた。

「情けないことに、私は今まで邪悪なモノに操られていたのだ…チカラを封じた人間の姿で対抗することは、あまりにも無謀であった…」

「そんな言い訳は良いよ!! タバサは何処!?」

「うぅ… 冷たいぞ、勇者よ…・゚・(ノД`)・゚・ 娘は天空城に飛ばした… 私の残りの魔力でお前も天空城に飛ばしてやろう。しかし気を付けるのだ… 城は邪悪なモノに乗っ取られているハズだ…」

そう言って、プサンさんはボクを天空城に飛ばしてくれた。

タバサ… 待っててね。すぐに助けに行くよ!!


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