天空城は邪悪な気配に満ちていた…
ただ、魔物が出そうな雰囲気ではなくて、何とも言いようのないイヤな感じがする。
ここにタバサが居ることは間違いないんだ… 待っててねタバサ!!
ボクはイヤな感じを振り払うように、王の間へと急いだ。
そして、王の間への階段を駆け上がった直後に見たものは
倒れているタバサと、その傍には…
何と、以前倒したはずのゲマが肩で息をしながら立っていた!!
「た、タバサッ!!」
「ほっほっほ… まったく何と間の悪い勇者なのでしょう…今しがたこの娘との闘いが済んだばかりだというのに…」
「プサンさんを操っていたのはお前か!?」
「ええ、その通りです…チカラを封じたマスタードラゴンなど、簡単に術に掛かってくれましたよ。そして彼に、過去に居たと言われる強力なチカラを持ったモンスターを呼び出させたのも私です。し、しかしながらこの娘… 本気の私をここまで消耗させるとは…やはり勇者のあなたではなく、この娘を連れてきたのは正解だったようです。これほどの魔力の持ち主ならば、あなたよりも邪神の依り代として相応しいに違いありません」
「そんなことは聞いてないッ!!
お前はもう一度倒す!! タバサは返してもらう!! 邪神の依り代なんかにさせないッ!!」
「…ほっほっほ… 随分ワガママな勇者ですね…しかし、こんな消耗し切った状態で勇者と闘うほど、私は馬鹿ではありません。ここはひとまず引かせてもらいますよ!!」
ゲマはそう言うと、タバサを連れて飛び去ってしまった!!
「待てッ!! ゲマッ!! タバサを返せッ!!!」
翼のないボクにはゲマを追い掛けることができない…
ボクの叫び声が空しく響く…
でも、ボクはゲマの飛んで行く先を目でしっかりと追い掛けた。
あの方向には… 確か古代遺跡があったハズ…
ゲマの向かった先は古代遺跡だ!!
天空城の動かし方を知っていたボクは、急いで遺跡の近くに城を降ろし
遺跡の内部へと足を踏み入れた。
遺跡の内部は相変わらずひんやりしていて、人の気配は全く無かった。
でも、以前コリンズくんを助けに来た時にも居た、幽霊みたいなヤツがボクの方に近付いてきた!!
ボクは慌てて身構えた!! しかし…
「慌てることはない… 我々はお前の敵ではない…」
何と、幽霊達が話し掛けてきた…!!
「先ほど、ここを通って行った邪悪なモノの行き先を知りたいのであろう…?」
そう言うので、ボクは幽霊達の話を聞くことにした…
「我々は、以前この場所から異世界に旅に出たのだ。異世界を支配しているという邪神を倒すためにな…」
「しかし、邪神と我々とではチカラの差があり過ぎた…我々は邪神に殺され、こうして幽霊の姿でしかこの世界に戻ってくることは出来なかった…」
「我々は、この世界の者が2度と異世界に迷い込まぬよう、ここを見張っていたのだが…どうやら先ほど通って行った邪悪なモノが、こちらの世界に邪神を呼び出そうとしておるようだ…」
「それだけは何としても避けなければならぬ… お前はあのモノの後を追うつもりだな?ならばここで『リュート』を吹くが良い… それは異世界への扉を開くカギなのだ…」
リュート…? コリンズくんから貰った、このリュートのことかな…?
そういえばコリンズくん、ここで見つけたって言ってたな… そんな意味があったなんて…
そして、ボクがリュートを吹こうと口に近づけた時…
「もう1つ、大事なことをお前に話さねばならぬ…」
と、幽霊はまた話し掛けてきた。ボクは早くタバサを追いたいのに…
「異世界に行き邪神を倒せば、恐らくもう2度とこちらの世界には帰っては来れぬ…それでもお前は行くのか…?」
な、何だって…? それじゃ、もう2度と…
優しいお父さんお母さん、サンチョさん、オジロンさん、ドリスお姉ちゃんやコリンズくん
仲間モンスターさん達に会えないってこと…!? そ、そんなのって…
次々とボクの頭を巡る優しい人達… もう2度と会えない…
でもボクは考えた…
「ボクが行かなきゃ… 誰がタバサを助けるっていうんだ…!?2度と戻ってこられない!? そんなのタバサがいなきゃ同じことだよ!!
約束したんだッ!! これからこの先何があっても、絶対にタバサを守るって!!!!」
ボクはそう叫んで、リュートを吹いてみた…
レ〜ラ〜ソ〜〜〜ファ〜ミレ〜ド〜シ♭ ド〜ラミ〜レ〜〜〜〜〜〜♪
ラ〜ド〜シ〜〜〜ソ〜ファミ〜ファ〜ソラ〜〜〜〜〜〜〜〜♪
勝手に指が動いた… どこか物悲しい旋律だ…
まるで、この世界との別れを惜しむような…
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
地響きがして、異世界への扉が開いた。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい… ボク、行くよ!!」
そう呟くと、ボクは勢い良く異世界への扉に飛び込んだ!!
待ってろタバサ!!