杖を探しに 第二部
ネッドの宿屋を出発してからもう数日が経っていた。
「サンチョ〜。暇だよ〜。」
「レックス様。もうしばらくの辛抱です。後少しで着きますよ。」
出発前にはあんなに張り切っていたレックスも、何日もこう船の中にいると退屈でいられないようだった。
「だって昨日もサンチョあと少しって言ってたじゃないか。サンチョの嘘つき!」
「そんなことありませんよ。あれを見てください。」
サンチョが指差した先にはもううっすらと大陸が見え始めていた。
「うわぁ。ねぇ、あそこにオラクルベリーって町があるの?」
「はい。だからそう言いましたでしょ、レックス様。」
「うん。本当だったんだ。タバサにも教えてこよっと。」
タバサはどうやら一人で考え事をしているようで、今レックス達がいるちょうど反対側、
つまり船尾のほうで今まで来た方向をただじっと見つめていた。
「ねぇ、タバサ。陸が見えてきたよ!ねぇ、聞いてる?」
「あ、ごめん、お兄ちゃん。今ちょっと考え事してたの…。」
「何考えてたの?最近タバサ考え事多いね。」
「え、うん…。それよりほんとに陸が見えて来たの?」
「うん。そうだよ!ちょっと来てみなよ!」
タバサの手を取りレックスは走る。そして船首にやってきた。
「うわぁ、陸だ。あそこに次の目的地、オラクルベリーがあるのね?」
「さようでございます。この船旅ももう終わりですね。」
レックスが口を挟んだ。
「早く終わってほしいよ。船って退屈だもん。」
「あら、船だ船だって楽しみにしてたのはお兄ちゃんでしょ?」
「え、だってそれは…。」
そんなことを話している間に大陸はもう側まで近づいてきていた。
「ささ、もうすぐ降りますよ。降りる準備をしてください。」
「どこに船を泊めとくの?」
タバサ、鋭い!
「え、あ、それはですね。その辺に…。」
「も、もしかして考えてない、とか?まさかね…?」
「はい。全然考えていませんでした…。オラクルベリーは港町ではないんで停泊所なんてものはないんですよ…。」
「じゃあどうするの。サンチョのバカ〜。」
「その辺に泊めといても誰も盗ってきやしませんって。」
「盗られたらどうするのよ!」
「大丈夫です。それにずっとここに泊めておくわけではありません。とにかく、大丈夫です。」
不安ながらもタバサはそれ以上反対しなかった。
そして、ゆっくり船を止めた。
ここはオラクルベリーの町。恐らくはこの世界最大級の規模を誇る町である。本来なら聞き込みをして、
すぐに新たな目的地に向かうつもりだったが、思った以上の長居をしてしまった。全ては「彼」の責任だ。
「ねぇ、サンチョ。カジノは〜?」
この一言が全ての始まりだった。
サンチョもカジノに寄る約束をしてしまった以上、寄らずには、いられなかった。
しぶしぶレックスとタバサをカジノに連れて行く。(タバサはそんなに乗り気ではなかったが)
「わぁ、遊ぶとこがいっぱいある。コインは?」
そう言われてサンチョは50枚のコインをレックスに買ってあげた。
「これだけですよ。」
「うん。」
今思えば50枚で済むわけが無かった。一度カジノに熱中しだしたレックスは次々とコイン
を使っていく。
スロット、格闘場、スライムレース、遊ぶ物は本当にたくさんあり、最初の 50枚がなくなると
次々にサンチョにコインを買わせていた。特に彼のお気に入りはスラ イムレースで、
色とりどりのスライムのレースを見て楽しんでいた。
「サンチョ、もうコイン無いよ。」
「レックス様、もうお金も無いよ。」
「えっ?」
そう、もう遅すぎた。サンチョの手元には、しめて17ゴールド。宿すらとれない。
こうなるまで気づかなかったサンチョも相当な者だ。
「ばか…。サンチョもお兄ちゃんも…。」
その光景を横から見ていたタバサ。うっかり者二人と一緒で本当に大変なのは彼女だろう…。
宿もとれない三人はとりあえず金を稼ぐ方法を話し合った。
「…。どうするの?」
「すみません、タバサ様…。」
「みんなで働こうよ!」
「…それしかないようですね。そうしますか?」
「…うん。働きます…。」
ということで三人は今宿屋に泊まり込みで働いている。これからの旅に必要な資金も稼が
なければならない。
しかし、ここでも聞き込みは忘れなかった。宿屋に泊まりに来た客一人一人に
ストロスの杖について聞いていく。
この聞き込みが、三人の杖探しの旅を大きく進展させることとなった―――。
「―――で、知りませんかね?」
「その杖についてなら、聞いたことがあります。」
思いもよらなかった返事にサンチョは驚いた。いや、後ろでその話を聞いていたレックスとタバサの方が驚いていた。
「え?詳しく教えてくれませんか?」
サンチョは冷静さを保ちながら聞いた。
「私も詳しく知っているわけではないんですがね、この大陸の西の大陸にルラフェンという町があるんですよ。そこに住むベネットさんという方がそれについて詳しく知っていると聞きました。すみません、私が知っているのはここまでです。」
「あ、ありがとうございました。レックス様、タバサ様、聞きましたね?」
「うん。聞いた!次はルラフェンだね。」
「そうです、行きましょう。杖はもう目前です。」
「あ、サンチョ。お金は…?」