「あ、あれがルラフェンですね。もうすぐ着きますよ。」
目の前にあったのは変わった構造の町だった。町の周りは壁に囲まれ、旅人を拒んでいるように見えた。
「なんだぁ、あの町は?サンチョ、あれが本当にルラフェンなの?」
「はい、そうですよ。レックス様。変わった町でしょう?」
「変わったも何も、あれって何のためにあるの?」
「『あれ』とはあの壁のことですね?確か魔物の襲撃を防ぐためだとか…。」
「でもお兄ちゃん、サンチョ、この辺の魔物さんには町を襲うような魔物はいないよ。私にはなんとなく分かるの。多分ここを襲うのは別の何か…。」
タバサは勘がいい。しかも魔物と心を通い合わせることが出来る。恐らくこのときも何か感じていたのであろう。ただの魔物ではない、別の気を。
そして三人は「壁」の内側へ入っていった。
「うわ〜。この壁の中ってこうなってたんだね。中も迷路みたいになってるよ。その、誰だっけ?杖のこと知ってるの。」
「ベネットさんよ…。お兄ちゃん、大丈夫?でもサンチョ、その人の家ってどこ?」
「それを今から探すのが私たちの仕事です!」
「えっ、この迷路を???」
「はい、頑張りましょう。三人で探せばすぐに見つかりますよ。」
町の中はかなり複雑で、町の住民でさえ迷ってしまうことがしばしばあった。
三人も苦労したが、大方の場所は人に聞いて分かっていたのでそんなに時間をかけずにその家にたどり着くことが出来た。
「ここね、お兄ちゃん。」
「うん、きっとそうだね。サンチョから中に入って。」
「えっ、私ですか?こういうときにはいつもレックス様は率先して入っていくのに…。」
「なんか緊張してさ…。」
結局サンチョから家に入ることになった。
「すみませ〜ん。誰かいますか?」
三人が家に入ってまず最初に目に付いた物は、大きな壷だった。壷は怪しげな煙を出しており、家の中は全体的に煙かった。
二階から声が聞こえる。
「わしはここじゃ。用があるなら上がってこい。」
「ゴホゴホ、じゃ、上りましょうか。」
三人は階段を上っていく。二階には老人が一人、なにやら難しそうな本を読んでいるところだった。
「お前さんたちが来たのはズバリ、これじゃろ。」
そう言って老人はある本をサンチョに手渡した。
『古より伝わりし杖、女神によって力―――』
と長々綴ってあったが、その内容はまさに彼らが今探している、ストロスの杖に関するものだった
「え、どうして分かるんです?」
「それを説明する前にわしのことをちいっと教えてやろう。わしはベネット。呪文研究家にして杖守りじゃ。」
「杖守り?そ、それって…。」
「まぁ聞け。わしはある者にある杖を守るよう命じられたんじゃ。」
「ある者って…?それにある杖ってもしや…?」
「だから聞いておれ。ある者の正体は教えられん。ただ、ある杖とはお前さんが探しているストロスの杖じゃ。しかし厄介でな、その杖は魔物達の物でもあるんじゃ。」
初めはいちいち聞き返していたサンチョも真剣にベネットの話を聞き始めた。
ベネットは続ける。
「わしに杖を守るよう命じた方がな、ある魔物にも同じことを命じた。なぜならその方は人間ではなく、魔物でもなかったからじゃ。そして二人で杖を守っていければよかったのじゃがな、魔物のほうもそれが不満らしくての。最近わしの命を狙ってきよる。それでこの町も何度か奴らに襲われてな、この壁が出来た訳じゃ。」
黙って聞いていたレックスが口を開いた。
「ベネットさん、僕たちにその杖をください。お願いします。」
「…やりたい気持ちは山々じゃ。魔物なんかに悪用されるくらいじゃお前さんたちに使ってもらったほうがよっぽどましじゃ。ただ、問題が二つある。一つはわしがあのお方に背いてしまうことじゃ。ま、これはわし一人の問題だからいいのじゃが…。しかし二つ目じゃ。お前さんたち、その魔物を倒せるか?あのお方が杖守りを命じるくらいじゃからその強さは相当な物じゃ。ひょっとしたらお前さんたち、死ぬかもしれんぞ。それでもその杖がほしいのか?」
三人は口をそろえて言った。
「はい。もちろんです。」
「そうか。だったら止めはせん。わしはあのお方に背いてしまうことになるが…。」
サンチョが聞いた。
「その杖はどこにあるんです?そしてその魔物とは誰です?」
部屋の地球儀を見せながらベネットは言う。
「じゃあ言うぞ。よく聞いてろ。この辺、カボチ村の北西だ。この地球儀を見ても何にも無いな。でもここに本当に小さな島がある。地図にも載らないくらい小さい島がな。そしてその島には穴が開いている。その穴から入っていくんじゃ。その穴の奥にストロスの杖はある。ただし魔物もその杖を守っていることを忘れるな。お前さんたちではかなわないかもしれん。それくらいの力を持っているはずじゃ。」
「で、その魔物は誰なんです?」
「魔物か…。大神官ハーゴンといえば分かるだろうか。」
「ハーゴン!?」
一番驚いていたのはタバサだった。
「ハーゴンって、本で読んだことある。本での中の話だと思っていた。本当に、いるの?」
「そうじゃ。おちびさんたち、ちょっと来てごらん。」
ベネットはレックスとタバサを呼び、二人の頭に手を置いた。
「いいか、じっとしてるんじゃ。すぐ終わるから。」
そういってベネットは何かを念じ始めた。
レックスとタバサは不思議な顔をしている。
「終わったぞ。」
「え、何をしたの?」
「呪文じゃ。わしは呪文研究家でもあるからな。レックス、お前はマホトーンの呪文が、
タバサ、お前はルーラとマヌーサの呪文が使えるようになったはずじゃ。これで少しは楽になるかの。」
「ありがとう、ベネットさん。本当に助かりました。」
「だったら早く行くんじゃ。なんとしてでも杖を手に入れるんじゃ。」
「はい、分かりました。」
三人は気づいていなかった。自己紹介もしていないのに彼らの名前をベネットが知っていたことに、この戦いの結果をベネットがもう知っていたことに。
「いよいよ杖探しも佳境です。頑張りましょう!」
三人はベネットの家を出て行った。
「ああ、マスタードラゴン様、申し訳ありません。私は、ベネットはあなたに背いてしまった。しかし、彼らなら大丈夫です。全ては予言のままに―――。」
杖を探しに 第二部 完