「レックス様、タバサ様、自分の相手と戦うことだけに集中してください。」
サンチョの声が響き渡る。
「おっと、よそ見しててもいいのかな?」
バズズはベギラゴンを唱えた。サンチョに火炎が襲い掛かる。
火炎が当たる寸前に横によけたが、左の手はもう火傷を負っていた。
「ぐっ、油断しました…。」
「ケッ、馬鹿め。戦いにおいて―――」
バズズが言い切らないうちにサンチョは動き出していた。大金槌でバズズを殴る。不意をつかれたバズズは大きく吹き飛ばされた。
「油断したのはどっちですか。」
「く、くそ…。人間ごときに…。」
どうやら今の一撃でバズズの足は折れたらしい。サンチョはつかつかとバズズのもとへ歩み寄った。
とどめの一撃を刺すためである。サンチョには聞こえないようにバズズはある呪文を唱え始めた。
「メ、メ…ガン……」
「危ない!」
その時である。バズズが唱えようとした呪文を聞き取ったレックスがバズズに斬りかかった。
「ぐぁぁ…。そ、そんな…。」
バズズは絶命した。
一方こっちはタバサ。巨人アトラスが相手である。
「私にとって初めての戦いだ…。お兄ちゃん。私、絶対に勝つね!」
ベネットに教わったマヌーサの呪文をアトラスにかけてみる。
―――効いた!
深呼吸をするとタバサは魔封じの杖を床に置き、グリンガムの鞭を手に取った。
この鞭、出発前に両親の寝室で見つけたものだ。タバサは鞭には慣れていなかった。でもやるしかない。
アトラスを鞭で打ちつける。
「ダメ、効いてない…。」
タバサには腕力が足りなかった。グリンガムの鞭を使ってもほとんどダメージを与えられない。
困惑するタバサ。このマヌーサがとけたら確実にアトラスに負けてしまうだろう。
「タバサ様、手伝いましょう。」
サンチョが駆けつけた。目が見えていないアトラスを殴る、殴る、殴る。あっという間にアトラスは崩れ落ちた。
「サ、サンチョ。強い…。」
「最後はあいつですよ。あいつは強いです。分かりますよ…。」
レックスとベリアルは互角の勝負を繰り広げていた。いや、レックスは疲れてきている。若干相手のほうが優勢だ。
タバサとサンチョが助太刀してもその状況は変わらなかった。
サンチョがいくら殴っても、タバサがマヌーサの呪文をかけても、ベリアルはびくともしないのである。
ふと、レックスはタバサが持っているものを見てあることを思い出した。
「そういえば、お父さんとお母さんの寝室に使える物はないかっていろいろ調べたっけ。タバサは鞭を持ってきたんだけど、僕は―――。」
レックスはある物を取りだした。そう、『ファイトいっぱつ』だ。果たして七年も前の物がまだ飲めるのだろうか?
しかし躊躇っている時間は無い。レックスは蓋を開けると一気にそれを体の中へ流し込んだ。
「なんだ、この力は…。力がどんどん湧いてくる。」
レックスはベリアルを斬りつける。ベリアルは短い悲鳴を上げた。
いい、確かに効いている。それだけではない、レックスの傷も癒えてきている。
この勝負、もらった…。
もはやサンチョとタバサは見ていることしか出来なかった。
「お兄ちゃん、凄い、強いよ!」
とどめの一撃、ベリアルの首を斬りつけた。
「あぁぁぁ、貴様、何故そんなに力を…。勝てると思ったのに…。ハ、ハーゴン様…。」
ベリアルもその場に崩れ落ちた。
「か、勝った…。サンチョ、タバサ、僕勝ったよ。」
「お兄ちゃん凄いよ!凄い!」
「レックス様。よくやりました。あと、さっきはありがとうございました。あの時助けて頂かなければ…。」
「大丈夫だよ。サンチョが危なかったから助けてあげただけだから。」
「はい。ありがとうございます、そしてよく頑張りました。それじゃあ、最後のひと頑張りです。さぁ、ハーゴンのもとへ向かいましょう。」