杖探し氏のSS…9

広間に声が響いた。

「向かう必要は無い。愚か者め。この大神官ハーゴンから杖を奪おうとするのか?」

「その杖はあなたの物じゃない。私たちにも必要なの」

珍しくタバサが言った。

「残念だが、私にも必要なのだ。私はかの昔から、邪神の復活のために様々なことを行ってきた。今、まさに邪神が蘇ろうとしているのだ。全てはこの杖のおかげ。この杖は封じられた物を蘇らせる力を持つ。しばし待つのだ。もう、邪神が復活する―――」

そう言ってハーゴンはストロスの杖を高くかざした。

「そんなことはさせないっ!」

レックスがハーゴンに飛びかかった。しかし、見えない『何か』がハーゴンの体を包んでいた。

レックスの攻撃はハーゴンに全くダメージを与えていない。

「レックス様、天空の剣をあいつに向かって思いきり振りかざしてください!」

サンチョはこの剣について調べ尽くしていた。敵に向かって振りかざせば凍てつく波動が放たれることを知っていたのだ。

レックスは言われたように剣を振りかざす。凍てつく波動がほとばしる!

「な、その剣はさては……、天空の剣。その剣を使えるとは、お前は……。」

驚くハーゴンを尻目にレックスはハーゴンに切りつけた。いや、レックスだけではない。

タバサとサンチョも一緒になって攻撃している。

「天空の勇者か。許せん……。」

ハーゴンはなにやら呪文を唱え始めた。

「お兄ちゃん、サンチョ。離れて! 危ない!」

魔法の気配をいち早く察知したタバサが言う。その瞬間、辺りにすさまじい爆発が起こった。

―――イオナズンだ。

間一髪のところで逃れた三人は体勢を立て直す。

しかし、何より驚くべきことはあれだけ攻撃されてもハーゴンは平気な顔をしているということだ。

「お兄ちゃん。効いてないよ。どうしよう……」

「どうするってったって。やるしかないさ」

そう言ってレックスは攻撃を続けた。ファイトいっぱつの効果も切れてきたのか、レックスの攻撃の威力が落ちてきているのが分かった。

「―――勝てない」

しかし、ハーゴンの攻撃は止まらない。強力な打撃、呪文、その攻撃は止まることなく三人を襲う。

「きゃぁ」

ハーゴンの打撃が直撃したタバサはその場に倒れた。

―――麻痺攻撃。ハーゴンは微笑む。

その時、レックスの体に一筋の光が宿った。

妹を目の前で傷つけられたこと、強すぎる敵に手も足も出ないこと、

レックスにとってのいろいろな負のエネルギーが、彼にこのような変化を起こさせたのだろう。

レックスは呪文を唱え始めた。レックス自身も知らない呪文だ。しかし彼は唱え続ける。

「ギ ガ デ イ ン」

凄まじい電撃がハーゴンを打ち付けた。相当なダメージだ。だが、まだ致命傷には至っていない……。

レックスの攻撃の手は休むことなく続く。ギガデインを唱え続け、魔力がなくなると天空の剣で

何回も、何回も斬りつけた。

「や、やめてくれ……。杖は渡す。そうだ、お前の―――」

ハーゴンはもうこれ以上喋ることはなかった。レックスが、ハーゴンの息の根を完全に止めたのだった。

横ではサンチョが何も出来ずに、ただじっと文字通り指をくわえてその光景を見ていた。

「サ、サンチョ。僕、やった…よ……」

そう言ってレックスも意識をなくした。

「レックス様、タバサ様、しっかりしてください!」

サンチョは倒れている二人を揺り動かす。しかし、返事は無かった。

「そうか、ストロスの杖。これを使えば―――」

サンチョはハーゴンの亡骸からストロスの杖を取り上げ、倒れている二人にかざした。

柔らかい光が当たりを包み込む。

「ん? あれ、どしたのサンチョ? ハーゴンは? 」

タバサは目を覚ました。いまいち状況が飲み込めていないようだったが。

しかし、レックスは目を覚まさなかった。

ゴゴゴゴゴゴ……

洞窟が震える。度重なるギガデインに洞窟が耐えられなかったのだ。

「詳しい話は後です。さあ、ここから逃げましょう」

サンチョは未だ意識がないレックスを抱きかかえ、走り出した。

タバサもそれに続く。

サンチョとタバサが洞窟を脱出したのと、洞窟が完全に崩れ落ちたのはほぼ同時だった。

間一髪で脱出できたサンチョとタバサは船に乗り込む。

サンチョは意識が無いレックスをベッドに寝かせ、今あった出来事をこと細かくタバサに話した。

「そう、お兄ちゃんがそんな…」

「はい、しばらくはこの船の上でレックス様の様子を見ていましょう。」

それから数日がたった。未だに目を覚まさないレックスを見ていたタバサがうとうとしかけた時、

レックスの手がぴくりと動いた。

タバサはそれを見逃さなかった。眠気も一気に吹き飛んだ。

「お兄ちゃん……?」

「う…ん……。あれ、僕、どうして?」

「お兄ちゃん!」

まだ意識がはっきりしていないレックスにタバサは抱きついた。―――タバサの頬は濡れていた。

「本当に、心配したんだからね。ほ、本当だ…よ……。うっ、うっ、うわ〜ん」

その泣き声を聞いてサンチョも駆けつけた。

「どうしたんですか?タバサ様。あ、レックス様! 目を覚まされたのですね?よかった……。心配してたんですよ……」

レックスは完全に回復はしていなかったのだが、三人は夜遅くまで勝利の喜びと、杖が見つかった喜びを分かち合った。


そう、こうして僕らはストロスの杖を見つけることが出来た。

しかし、僕たちの旅はまだ終わっていない。お父さんとお母さんを見つけ出し、この杖で元に戻してあげるんだ。

それまでは気を抜いちゃいけない。絶対にみんなでグランバニアへ戻るんだから。


「ねぇ、サンチョ。次の目的他はどこ?」

「次の目的地はですね―――」



僕たちの冒険は続く。お父さんとお母さんが見つかる日まで―――



                          杖を探しに 完


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