403氏のSS…3

レックスクエスト 
第二章 それぞれの思惑



「う〜ん!少し寒いけど久しぶりの船旅も悪くないわよね〜♪」

長い金髪の髪をなびかせながらグランパニア女王、ビアンカはアベルに声を掛けた。

「ん、ああ、そうだね、それにしてもデール王もワザワザ船を出すとはおもわなかったよ・・・」

「そりゃあそうよ、名目上はグランパニア国とラインハット国の親睦会だからね、向こうとしてはそれくらいの歓迎をしな
いといけないんじゃないの?」

「あ〜・・・そうなんだよなあ〜・・・・名目上は国と国との親睦会なんだよな〜」

そうなのだ、『コリンズのタバサ姫奪還計画〔企画、ヘンリー 協力 アベル〕』は国と国との親睦会中に突然現れるモ
ンスター、そこでさらわれてしまうタバサ、それを助けに行くコリンズとレックス、そういうシナリオになっていた。

名目上は国と国との親睦会、しかもラインハットで行われるのである。『コリンズのタバサ姫奪還計画〔企画、ヘンリー
 協力 アベル〕』の事などまったく知らないデール王としては精一杯のおもてなしをしなくてはならない。

わざわざグランパニア→サラボナ間の船まで用意してくれた。

無論、その後のサラボナ→ポートセルミ間の馬車、ポートセルミ→ビスタ港の船も用意してある。ものすごい歓迎であ
る。

「ふふっ、コリンズ君もタバサがさらわれたって言うのなら嫌でも動くわよね♪けど、そう簡単にはタバサはあげないわ
よ!タバサにはしっかりと自由な恋をさせてあげるんだから!王族とかの問題なんてくそ食らえよ!ね?アベルもそう
思うわよね?」

「え、ああ・・・そ、そうだね・・・ははは・・・・」

よかった、婚約の話とか言わないで・・・アベルは心のそこからそう思った、言ってたら自分はきっと、グリンガムの鞭
で一晩中叩かれ、新しい世界の扉が開かれてしまうかもしれない。そんな世界、見たくない。

ラインハットについたらヘンリーに婚約とかの話は無しでときちんと言おう、ヘンリーだってそこの部分にはそんなにこ
だわらないだろう、ヤツも恋愛結婚だし。

「モンスター役の皆も張り切ってたし、今回の冒険はコリンズ君にとって忘れられない経験になるでしょうね、あ〜・・・
私もあと10歳若かったら参加するのになあ〜」

「大丈夫だよ、ビアンカは今でも若いって」

「ふふっ、ありがとうアベル♪・・・あら?そういえばレックスの姿が見えないけど・・・?」

「ああ、レックスなら何か用事が出来たらしくてメッキーをつれてどっか行ったよ、サラボナで会おうって言ってたよ」

「ふ〜ん、まあレックスも14歳だもんね、何かあるんでしょ」


王と王妃は、とてものん気に船旅を楽しんでいた。

子供心、親知らずとでもいうのだろうか・・・

同刻 山奥の村 洞穴のよろず屋

「あいよ、頼まれてたシルクのヴェールだよ。」

「ありがとう、おじさん」

レックスはこの日の為に一週間程前にこのよろず屋にシルクのヴェールを注文していた。

昔タバサと二人で父に聞いたことがある、母の結婚式に父がこの店のシルクのヴェールを渡していたと、それはそれ
はとても綺麗なヴェールだったと。

そしてタバサは僕にこう言ったんだ。

『私の結婚式にもそこのヴェールでやろうね!お兄ちゃんが渡してよね!』

おさない頃の話だ、タバサはもう忘れているかもしれない、けど、王ではない兄として、結婚することになる妹にできる
、最後の優しさになるかもしれない・・・・

そう思い、この店で予約をした。確かに綺麗なヴェールだ、できるなら、僕がこの手で・・・タバサに付けて・・・あげた
かった・・・・・・そう思うと胸が締め付けられる、涙が出そうになる。

別に結婚が決まってる訳ではないのだが、ネガティブになったレックスの思考はもう誰にも止められなかった。

「そういやアンタ、ダンガンさんのお孫さんだよね?何だい?親戚か誰かが結婚するのかい?」

「いえ、僕の妹が・・・結婚するんです・・・」

「・・・・へっ?」

さあサラボナに行こう、明日には父や母、そして最愛の妹がサラボナにつく。泣くな、笑うんだ、妹の前でそんな顔をし
てどうする!

「メッキー!ルーラを!」

「クエー!!」

駄目だ、涙がでる。いいや、今日は泣こう、サラボナの宿で泣こう・・・今日だけは・・・泣こう・・・

ネガティブ思考が暴走しているレックス、彼のネガティブ思考は彼の胸を締め付けるのであった。



余談ではあるが、この夜、ダンガンさんが原因不明の病態でまた寝込んでしまったらしい。



同刻 船の一室

「もうすぐ・・・お父さんともお母さんとも・・・お兄ちゃんとも・・・お別れ・・・か・・」

椅子にもたれながらタバサは考え込んでいた。向こうについたらもう、グランパニアの土は踏まない、そんな覚悟でい
かないと・・・

大丈夫、私は強い子だ、もうお母さんお父さんに会えなくても大丈夫・・・数年前までお兄ちゃんと二人でがんばって
来た、その、お兄ちゃんともお別れ・・・そう思うと胸が締め付けられる、涙が出そうになる。

お城からこっそり持ってきた母のウェディングドレスを箱からだし、父や母、そして大好きな兄との思い出を駆け巡らせ


昔おにいちゃんと二人でサンチョに見せてもらったことがある。父の結婚式に母が着てきたウエディングドレスらしい、
サンチョはその姿を直接見た訳ではないが、父が言うにはとてもとても綺麗な姿だったという。

『へぇ〜、これがお母さんが結婚するときにきたウェディングドレスか〜・・・タバサが結婚するときは、ぜひこれを着て
くれよ!』

おさない頃の話だ、兄はもう忘れているかもしれない、けど、妻としてではない妹として、結婚することになった私にで
きる、最後の姿になるかもしれない・・・・

そう思い、こっそりこのウェディングドレスを持ってきた。確かに綺麗なウエディングドレスだ、出来るなら、貴方が隣に
居て・・・・手を引っ張って・・・欲しかった・・・そう思うと胸が締め付けられる、涙が出そうになる。

何度も言う、何度も言うが別に結婚が決まってる訳ではないのだが、ネガティブになったタバサの思考ももう誰にも止
められなかった

「そうだ、お父さんとお母さんに、きちんと挨拶をしないと・・・」

そう思い、部屋をでて父と母がいる甲板へと向かった。

────

「あ・・・あの・・・お父さん・・・お母さん・・・?」

「ん?どうしたのタバサ?」

今までありがとうって、お父さんとお母さんに会えたことにありがとうって・・・たった数年だったけど、私は二人の子で
とても幸せでしたって・・・言わないと・・・

「あ、あのね・・・?」

「なんだタバサ?改まって?」

「私・・・お父さんとお母さんの子で・・・とっても幸せでした・・・」

「な、何よタバサ突然!どうしたの!?」

ビアンカは動揺している!

「たった・・・たった数年だったけど・・私は・・お父さんと・・・お母さんにあえて・・・ヒック・・・うれしかったです・・・」

「ど、どうしたんだタバサ!な、何があったんだ!」

アベルは動揺している!!

「ヒック・・・わ・・・私が・・・・い、居なくなっても・・・・ヒック・・・わ・・・私・・エグッ・・・」

駄目だ、最後までとても言えない・・・・・きちんと・・・お別れの言葉を・・・言おうと・・・してたのに・・

「・・ひっぐ・・・ご、ごめんなさい!!!」

タバサは逃げ出した!!

アベルは動揺している!

ビアンカは動揺している!!

「あ、貴方!あの子にいったい何があったの!?」

「わ、分からない!いったい何があったんだ!?」

「ど、どうしよう・・・あの子、なんだか分からないけどものすごく追い詰められた様な顔をしてたわよ!?」

「と、とりあえず様子を見よう!ああいう場合は下手に刺激したら駄目だってサンチョから聞いた!と、とりあえず思春
期の女の子だし、何か言いづらいことがあったのかも知れない」

「そ、そうね、と、とりあえず様子を見ましょう!」


部屋に戻ったダバサは布団の上にうずくまった。


ちゃんとお別れの言葉を言おうとしたのに・・涙がでる・・・いいや、今日は泣こう、明日サラボナにつく・・・今日だけは
・・・泣いても・・・いいよね・・・

お別れの言葉は・・・・結婚式で言おう・・・・

ネガティブ思考が暴走しているタバサ、彼女のネガティブ思考も彼女の胸を締め付けるのであった。


余談ではあるが、その夜アベル王とビアンカ王妃は眠れるはずもなく、寝不足で船の乗組員にあらぬ誤解を招いてし
まったらしい。

同日 ラインハット城 コリンズの部屋

「お〜い、コリンズ、明後日くらいにレックス王子とタバサちゃんがくるぞ〜、変な格好するんじゃないぞ〜」

「分かってるよ親父・・・ったく、親父は心配性だなあ・・・・」

「俺のことは親父じゃなくて父上だ!ち・ち・う・え!まぁ〜ったく、成長するどころか口まで悪くなりやがって!」

「はいはい、父上!しっかし楽しみだな〜・・・レックスやタバサと会うのも久しぶりだなあ〜」

「ずいぶんうれしそうだなあ〜?お前、レックスはおまけでタバサちゃんと会うのが楽しみなんだろ〜?ああ〜ん?」

「な、ななななななな!!ば、ばばばば馬鹿親父!そ、そんなわけあるか!お、俺はただ、と、友達と会うのが楽しみ
なだけでだなあ!!」

「ふ〜ん・・・・」

こりゃ婚約話なんて出来るもんじゃねえな、コリンズはまだまだお子様だし。

ヘンリーは動揺する息子をニヤニヤからかいながらそう思っていた。

ま、向こうもちょっとした遊びの一環と思っているだろうし、まいっか。

そう、のん気に考えていた。

同日 ラインハット城 地下脱出路兼地下牢

「あ〜違う!違うぞオークス!!あ〜!どうしておいらの言う通りにセットしてくれないかなあ・・・?」

「そんな事言ったってタークの坊ちゃん、この台座結構重たいんですぜ?」

「ターク様、この柱、もう少し禍々しくするために魔界の彫り物でも致しましょうか?」

「おう!ライオウは気が利くなあ〜、んじゃ、それは任せたよ!」

「御意」

ラインハット地下ではアベルのモンスター達があらかじめ集まり、ダンジョンのセットをしていた。

アベルとヘンリーには城の地下を自由につかっていいと言われた、ならば本格的にするだけだ!

こんな楽しそうな企画、タークが乗らないはずがない、ラインハット城地下はもうこの世の元は思えないぐらいに邪気
が漂ってそうな雰囲気になっていた。まあ、実際はタークの趣味一色なだけなのだが。

「あ〜!スミス!そこに座るな!そこはおいらが座る席なんだぞ!あああ〜!!!」

そう楽しそうに(?)準備をしているタークに一人の魔導師風の男が近づいてきた。赤いローブにとても悪い顔色、今ま
で見たことがない男である。

「これは楽しそうですね・・・タークさま・・・・?」

「ん?誰だお前は!ここは立ち入り禁止にしてもらったはずだが・・・?」

「いえ、安心してください、私も貴方様たちと同属、つまりアベル王に救われた魔族でございます・・・」

「ん?そうなのか?いや、それは悪かったな」

「いえいえ、気にしては居ませんよ・・・それよりも、私も手伝わせてください・・・折角のお遊びでございます、やはり楽
しまなくては・・・・」

「あ、ああ、んじゃあとりあえず床磨きしているあいつ等を手伝ってくれ!時間が迫ってるから!」

「はい・・・分かりました・・・・クックックック・・・・・」

その魔導師風の男は不気味な笑いをしながら床磨きをしているバトラーとメッサーの元へ向かっていった。

彼が去った後、タークははぐりんを呼んだ。

「・・・・おい、はぐりん、はぐりんはいるか?」

「ここですよ〜♪シュルルルルル〜」

「・・・・あの魔導師みたいな男に付いていてくれ、どうもおいら達とは空気が違うんだ、アイツ・・・」

「わっかりましたぁ〜♪シュラララララ〜」

なんだ、アイツは・・・・どうもおいら達と空気が違う・・・・おいらや父エスターク、ここにいる魔族みたいな純粋な『魔』
が感じられない・・・・あのにおいは寧ろ・・・父を利用しようとした『人間』の臭いに近い・・・

そう、難しいことを考えていたタークであったが、自分が座る王座に今度はヌーバば座ろうとしていた所を見て、そん
な考えはすべてすっ飛んだ・・・・・


レックスクエスト 
第二章 それぞれの思惑 終

第三章 親睦会の覚悟


戻る